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私の欠けているところ
第10章 逃げ回る時を追いかけたんだけど

それから時が目を覚ましたのは
4時間後のことだった


「…陸…」

目の前に俺がいて
驚いたのか
時は思わず
梶谷ではなく
俺を陸と呼んでいた


「腹、減ってないか?
お粥、食べるか?」


そう言いながら
時の頰に触れ
おでこに手をやると

時の目は
あっという間に
涙でいっぱいになり

そして

溢れた涙が
流れ落ちた


「泣くなよ…
泣きたいのは
時に相手されない
俺なんだぞ?(苦笑)」


「……」


俺は時の流れた涙を拭い
そして
時の手を握りしめた


「あー良かった。
あったかくなってる。

さっき
すげー手が冷たかったから
心配してたんだ。

さっきよりも
顔色もいいし
安心した」



「………」



「時…」



「……」




「痩せたな」



「……」




「なんかあったか?」




「……」



なかなか時は
口を開いてくれなかったけど
涙を拭う俺の手を振り払ったり
早く帰れと言われないだけ
よかった
と、思っていた



「薬とか…飲むか?」


「…うん」


薬は飲まなきゃと思ってるのか
その質問には返事をして
時は身体を起こそうとした

俺が手を添えて
手伝ってやり
ゆっくりベッドに座った時は
とてもダルそうにしていた


「薬、どこ?」


「私取るから、大丈夫」


「無理すんなよ。
手伝ってくれる人がいるときは
甘えろって」


「…一番上の引き出し…」


「わかった。
薬飲む前に
なんか食べた方がいいよな?
お粥食うか?」


「お粥?」


「勝手に台所借りた。
時寝てる間に
お粥作っといたんだ」


「すごい…」


「俺は、父子家庭だから
やればなんでも
そこそこできるんだ。
食うだろ?」


「あ…うん」
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