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私の欠けているところ
第10章 逃げ回る時を追いかけたんだけど


「何か手伝うことあるか?」


皿を洗って
そう声をかけると


「ううん…もう十分」


時は
布団の中でそう答えた



「じゃあ…」


「……」




「……そろそろ帰るよ」


帰りたくないけど


ずっと
時の寝顔を
見ていたいけど


帰ってしまったら
もう二度と
会ってくれないような
気がしたけど


「…うん」


さすがに
泊めてくれと言えなかった俺は
結局
具合の悪い時に
肝心なことは
何も言えないまま
部屋を後にした


どうして
突然居なくなったのか

どうして
俺を梶谷と呼んだのか


どうして


あんなに
痩せてしまったのか


まさか
食べる金も無いなんてこと…ないよな…



俺は
トボトボと歩きながら
色んなことを考えていた


その日は
目についたカプセルホテルに泊まり
目を閉じる前に
時にLINEを送った


『駅の近くのホテルにいるから
何かあったら連絡しろよ。
すぐ行くから』


結局
そのLINEは
既読にならなかった


これで…終わっちゃうのかな…
俺達



その夜

俺はもう
時に二度と会ってもらえないような
そんな気がしてならなかった
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