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第3章 はみ出した口紅
黒いドア。

呼び鈴を押そうとしたときだった。

――― ガチャリ。


「入って?電話くれた子だよね?」


ドアが開いて、中から男の人が煙草を咥えて出てきた。


「はい…」

案内されるままに部屋へと入る。


広々とした間取りだけど、窓のすぐ外には隣のビルの壁、そして生活感の無い部屋。


「そこ…座って?」

応接セットが置かれている部屋へと案内された。

…制服なのかな?

男の人は先ほどの人と同じスーツを着ていたけれど、ネクタイが緩んでいた。私は言われるがままに浅くソファーに座った。思いのほか柔らかくて、バランスを崩しそうになった。

「貰った名刺見せてくれる?」

男の人は、煙草を消しながらソファーに深々と腰を掛けた。

「君…高校生?」

「専門…行ってます」

冷静に嘘をつく。

「若いね…卒業したばっかり?履歴書と身分証明できるもの見せてくれる?」

財布から証明書を出し、履歴書と一緒にテーブルの上に置いた。

「ふーん。服飾系?デザイナーとか?」

服飾デザイン学校の偽学生証だ。

「はい」

男の人は、じっとこちらを見つめていた。

「服飾系の子って派手な子が多いんだけど…」

…要するに、地味だってことが言いたいらしい。

「清楚で可愛らしい感じだから、人気出ると思うよ」

…清楚で可愛らしいかったら、馬鹿でも良いってこと?

ついつい穿った見方をする悪い癖。

「…でもね…可愛いだけじゃ駄目なんだよね。頭もそこそこ良くないと…やっていけないの。淘汰されちゃうんだよ」

ドキッとした。見透かされてるのかと思った。

「うちは、会員制で紹介が無いと入れない」

ーーーひらり。

男の人は、一枚の紙を差し出した。

「契約…書?」

「ああ。秘密を守って貰う必要があるんだ」

その紙には、細かい注意事項が書かれていた。















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