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第13章 お城…



食事を済ませてモールを出て涼ちゃんが車を再び海岸線を走らせる。


「この先に城があるのを理梨は覚えてるか?」


涼ちゃんがそんな事を聞いて来る。

お城…。

絵本に出て来るような西洋風の赤い尖り屋根の付いた古臭いお城…。

言わずと知れたラブホテル…。


「有名だからね…。」


町のカップルなら誰でも行った事があると言われているような古いラブホテル…。


「そうじゃなくて、理梨が小学校に入る前にうちの父さんと俺とこの道をドライブしてた時の事だよ。」


涼ちゃんがクスクスと笑い出す。

そんな昔の事はほとんど覚えていない。


「それが…、何…?」

「理梨が父さんにあの城に連れて行けって強請ったんだよ。」

「えーっ!?」

「で…、父さんにそれは無理だって言われた理梨が泣き出した。」

「そんな事はしてないよ。」


全く覚えがない話はなかった事にしたくなる。


「だから、俺がいつか連れて行くから待ってろって約束をしたんだ。」

「そうなの?」

「そうしたらさ、父さんが俺に本気で連れて行くつもりなら理梨と結婚するつもりじゃないとダメだとか言うんだよ。」


要するにその頃は涼ちゃんもお城の意味がわかってなかったという話…。


「それが?」

「そう言われたから、家に帰ってから俺は理梨にプロポーズした。」


それは覚えている。

私が盛大に涼ちゃんを振ったプロポーズ…。


「あれって…、そんな話からだった?」

「そう…、俺が連れてってやるって言ったのに、理梨には思いっきり俺はやだって言われたからショックでハッキリと覚えてる。」


涼ちゃんがふてくされるから笑ってしまう。

そんなくだらない事が涼ちゃんにはそんなにショックだったとか思ってもみなかった。


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