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VERTEX
第14章 相手がいない…



「自分じゃ弱すぎるから…、すみません。」


リングから降りて来た加藤さんまでもが私に頭を下げて来る。


「他に涼ちゃんの相手が出来そうな人は?」


私の言葉に会長さんが首を横に振る。


「東京のジムなら多少は居るが、試合前だから涼二に潰されたくないと誰もが考える。ましてや涼二が練習不足なら涼二を潰せるチャンスだとしか思わない。」


あくまでもVERTEX内では誰もが涼ちゃんのライバルでしかない。

VERTEX外の人でも涼ちゃんを潰せるチャンスが来れば自分がVERTEXに上がれるチャンスにしか考えない。


「なら…、例えば…、勇気君は?」


私にわかる選手は勇気君しかいない。


「キックの勇気?」


霧島さんの質問に頷くと


「無理だ…、あの子はまだ高校生だし階級が下だからスピードはともかくパワーが涼二と違い過ぎる。ましてやルールも違うやり方しか知らない子では涼二の相手をさせても怪我をさせるだけだ。」


と会長さんが答えて来る。

誰もが涼ちゃんは手に負えないのだとため息をつく。

何故、そんな事に…。

涼ちゃんはただ練習をしたいだけなのに…。

負ける訳にはいかないからと真っ直ぐに進んだだけなのに…。

誰も涼ちゃんを助けてはくれない。

それどころか私に涼ちゃんを止めろと言う。

私が迷っているうちに涼ちゃんがジムに帰って来る。

どう見てもランニングだけのはずのロードで涼ちゃんがボロボロになっている。

そんな涼ちゃんに練習をするなと私が追い詰めるとか出来る訳がない。

ジムの雰囲気を悟った涼ちゃんが会長さんを睨みつける。


「シャワーをして来る。」


私の頭を撫でて涼ちゃんがジムの2階へ向かった。


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