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夢の欠片(くすくす姫サイドストーリー)
第1章 前編
男はあの後、宴席に出ることがめっきり減っておりました。

あの夫人を偶然であっても見てしまうのが辛いと言うのも有りましたが、賑やかな場に出る事すら、心底面倒だったのです。
しかし、今日は男の家業に関わる人々を呼んで行う、男の家が主宰の会でした。
恒例の行事でも有りましたし、日程も招待客も夫人に初めて会った日よりかなり前から決まっておりました。人に会いたくないという程度の理由で、取りやめる事の出来る物では有りません。
それでも、男は主宰者として必要最低限の役割だけをこなし、あとはなるべく目立たぬように、会がお開きになるのをひたすら待ちました。

「お越し下さってありがとうございました。…ええ、また」
長く感じられた宴席は、ようやく散会となりました。
親しい者たちが居残って飲んだりする事もありましたが、最近男の調子が良くなさそうだと言うことで、領主の息子が今日は止めにしようと仲間内に呼びかけておりました。

「また体調が治ったら集まろうな」
「…そうだな」
「お前は仕事のしすぎだ、ゆっくり休め」
「そうする」
三々五々去って行く人々と挨拶を交わし、領主の息子が最後に残りました。
「…大丈夫か?」
「ああ」
「どうしてそこまで…いや」
男が目も合わせず、帰れとあからさまに伝えるように黙り込んで居るのを見て、領主の息子は苦笑しました。
「聞いても無駄だったな」
男の肩をぽん、と叩くと、扉に手をかけました。
そして、去り際に一言残しました。

「とにかく、皆心配しているぞ。くれぐれも、無理はするなよ」




「何だ?何か忘れ物…」
「こんにちは」
友人を見送ってすぐに、扉が控えめに叩かれました。
男は内側から扉を開けて、目を見張りました。
そこにはあの女性――隣地の領主の夫人が立っていたのです。

「…いらっしゃってたんですか」
「ええ。ご挨拶もせず、失礼致しました」
夫人をそこに立たせて置く訳には行きません。
かと言って夫の居る女性と玄関先で話すのも、あらぬ誤解を生みそうです。
男は夫人を玄関の側の、簡素な応接室に案内しました。

「どうぞ。何もお構いできませんが」
椅子を勧めると夫人は微笑み、目礼して腰を掛けました。
「すみません。今日は、お詫びを申し上げたくて…皆さんの居る所では、言い辛かったので」
「詫び?」
詫びる必要があるのは、自分の方です。男は眉を顰めました。
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