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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第9章 学園のエキセントリックな女教師
 理沙の目の前にある教員机の上に、先ほど回収した謎の生物を袋のまま置く。袋を手にすると理沙は、その袋を色々な方面へ向けて点検し始める。眺めた後は軽く指圧してみたりと、感触も確かめていた。

「何だこれは、生き物か?」
「ええ多分……先生にも見覚えってないですか?」
「見覚え?う~ん……タツノオトシゴに似てる形はしてるが――こんな色のヌメっとしたのはいないし、そもそも鰭がないからなぁ……」

 唸りながら潜思する理沙の次の挙動を、真吾と彩夏はじっと待った。
 暫くして――。

「知らないな。見た事もないようだ」

 と理沙はきっぱりと言った。
 理沙にもわからないのならここでの用は済んだ。さっさと帰ろう――真吾は理沙の手から謎生物を回収しようと手を伸ばした。

「――って先生、返してください」

 伸ばした手を理沙がスイっと避けたので、真吾は勢い余って空を掴んだ。

「これ、おまえたち二人で見つけたのか?」
「ええ――まぁ、そうなのかな……」

 答えに困って真吾はお茶を濁した。
 見つけた経緯が気軽に話せるような内容ではなく、絵空事めいた不可思議な出来事まで絡んで――話せるような部分がまるでない。
 表沙汰にされてなくても、存在だけは確認されている可能性もゼロでは無い。高校教師の癖に、学会に所属している理沙なら何かわかるかもと考えて、真吾は理沙を訪ねた。
 彩夏の心情を考えると、何かしら安心材料が知れたら良いなと思ったのだ。

「ふーん……おまえたち二人で……ねェ」

 そんな事情と露知らず、理沙は訝しむように思案した。
 その顔に、真吾は何だか悪寒を感じた。
 
「見つけた場所と状況は?」

 こう来るのか――尋問の如く訊ねられ真吾は返答に詰まった。
 見つけた場所と状況なんて言えるか……!
 これがまだ自分ひとりで理沙を訪ねていたなら事情は違う――だが隣には彩夏がいるのだ。この状況で発見の経緯を教えれば相手が割れてしまうし、彩夏がどう出るかでただの危機的状況が絶体絶命的な状況に変わりかねない。真吾は彩夏を連れて来るのはだから遠慮したかったんだと悔やんだ。
 隣の彩夏をチラリと見ると、彼女も答えあぐねている様子だった。
 困ったように眉根を寄せている彩夏――助けを求めるような弱気な仕草が可愛い。真吾は場違いにも見惚れそうになった。

「何だ、答えられないのか?」
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