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身代わりの夜
第3章 かんちがい口唇奉仕
 だが、至福の時間は長くつづかなかった。

 亜沙子の背筋がびくんと震える。

「えっ? や、やだ……うそっ……」

 片手を動かして、何かもぞもぞ探っていたと思ったら、悲痛な声がした。

「ああ、どうしよう……わたし、おもらし、しちゃってるっ!
 ……えっ、あっ、やっ」

 口走ってから、部下の前だということに気づいたようだ。

 啓太の肩に埋めていた顔をぱっと離し、両手で覆った。

「あああっ……わたし……どど、どうしよう……
 うっ、うううっ」

 すすり泣きを洩らす。

「あ、あの、課長……それは……」

「言わないでっ!」

 鋭く叫ぶ声に、啓太は説明の言葉を呑み込む。
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