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いつかの春に君と
第3章 永遠の花
鬼塚はきっちり5分で今城の白手袋を探し当てた。
「どうぞ、今城少尉」
差し出すと、今城は眼を見張った。
「すごいな、君は。僕が探しても全然見つからなかったのに」
「…今城少尉は、手袋を机の引き出しの奥に仕舞われる癖がおありです。それを覚えていただけです」
鬼塚は控えめに答えた。
「大したものだ。君は優秀なだけでなく記憶力も気働きも素晴らしいのだな」
存分に褒めると…
「…では嵌めてくれ」
今城は当然のようにその手入れの行き届いた手を差し出した。
鬼塚は今城の手を取り、丁寧に手袋を嵌めてゆく。

今城は細身だが、背が高い。
…大佐より…少しだけ低いくらいかな…。
自分も早く今城くらいの背丈になりたいと思う。
同期の中では背丈は高い方だが、男に比べるとまだまだだ。
…早く…あの人と肩を並べるくらいに大きくなりたい…。

「…あの大佐とは」
鬼塚は思わず貌を上げる。
人懐っこく輝いていた瞳は、意外な強さの光を灯していた。
「一緒に住んでいたんだって?」
…どこまで話して良いのか、鬼塚は一瞬躊躇した。
しかし憲兵隊の入隊試験を受ける時に身上書は包み隠さずに全て記入したから、今更隠す事柄でもない。

「はい。…十二歳の時に大佐が私を救護院から引き取って下さいました。それから幼年士官学校入学迄の三年間は大佐のご自宅に住まわせていただきました」

両方の手袋を余すところなく嵌めることが出来た。
手を離そうとした時、今城の白手袋の手が思わぬ力で鬼塚の手を握りしめた。
びくりと思わず震えた鬼塚を可笑しそうに笑う。
「君は意外に男慣れしていないんだな。…どうやら君の大佐は君を大切に桐の箱にしまい込んでいたらしい」
「今城少尉…!」
握りしめられた手を振り解こうとしたが、意外な程の力で押し留められた。
「…隻眼の美しきドーベルマン…。僕たち若い将校には有名な話だったよ。あの冷酷非情な人嫌いの大佐がわざわざ子飼いにするなんてね…。だから僕のお付きに決まった時は嬉しかった…」
…愛の告白をするかのように両手ごと引き寄せられる。

鬼塚は唇を噛み締めた。
…ちくしょう。上官じゃなかったら殴り付けてやるのに…!

途端に今城が手を離し、笑い転げた。
「危うく腕をへし折られるところだったな!さすがは躾の行き届いたドーベルマンだ!」
揶揄われたのだと気づき、鬼塚は憤然とした。
「今城少尉!」

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