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いつかの春に君と
第3章 永遠の花
抗議しようとする鬼塚を今城は手を上げて制する。
「悪い悪い。…君は、とても興味深い人物でね。ついつい好奇心が働いてしまった」
悪びれずに謝られると、それ以上は何も言えなくなる。
…それに直属の上官だ。

鬼塚は黙って今城の軍服の着付けを手伝った。
今城はスタイルが良いので、憲兵隊の将校の黒い正装の軍服が良く似合う。
細腰のサッシュベルトを締め、何気なく尋ねる。

「…元帥閣下は何のご用事で?お迎えの準備はしなくて良いのですか?」
本来なら鬼塚ら見習い士官は警備に当てられる筈だ。

「ああ、非公式に見えられるから大丈夫だ。
…元帥の奥方は僕の母の姉でね…。つまり、元帥は僕の叔父なんだ。だからご案内役を仰せつかっただけさ」
「…はあ…」
さらりと言われた内容に呆気に取られ…しかし、なるほど、だからこの人は飄々として浮世離れしているんだと納得する。
「どうせ、金持ちのドラ息子が行き場をなくして憲兵隊の将校に捻じ込まれたと思っているんだろう?」
にやりと笑われ、鬼塚はむっとする。
「そんなこと…思ってません」
…なんだってこの人は人の心を先回りして読むようなことをするんだ。
憮然とした貌をする鬼塚を楽しげに見遣り、椅子に座って脚を差し出す。
「ブーツを履き替えたい。馬場から歩いて来たから泥が付いてしまった。…イタリア製の方にしてくれ」
「はい。今城少尉」
鬼塚は反射的に隣室の支度部屋に足早に入る。

外国に留学していた今城は、とにかくお洒落だ。
支給されたブーツなど眼もくれず、舶来の高級ブーツを持ち込み、支度部屋に並べさせている。
鬼塚はその中から今、一番気に入っているらしいイタリア製の黒革のブーツを手にする。

床に跪いて、今城のブーツを脱がし、履き替えさせる。
ブーツの紐を緩くもなくきつくもなく結ぶ。
朝一番で磨き上げた高級ブーツは美しい艶を帯び、今城の長い脚に良く映えた。
「うん。素晴らしい」
今城は満足そうに頷いた。
「君の仕事は完璧だ。ありがとう」
「恐縮です」
…揶揄うし、冗談ばかりで不真面目な気はするが、今城は部下をとても評価し、大切に扱う。
上官に常に殴られている同期を見ると、自分は恵まれているのかな…とは思う。

「さて、別れのキスは…?してくれないのか…やはり」
天を仰ぎ大袈裟に嘆く。

…これがなければ最高なんだけどな…。
鬼塚は溜息を吐いた。


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