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いつかの春に君と
第3章 永遠の花
空き時間は厩舎に脚を運ぶ。
…男の馬の世話をしたいからだ。
男の馬は黒いアラブ種だ。
気難しくて男にしか懐いていないのだが、最近は鬼塚にも少しずつ心を開いてくれている。
鬼塚が近づくと、嬉しそうに嘶いた。
「元気にしていたか?アレス」
アレス…ギリシア神話で戦いを司る神の名前だと、男がいつだか教えてくれた。
鬣を撫で、林檎を食べさせてやる。
林檎はアレスの大好物だ。
「お前、最近遠乗りに連れて行って貰っているか?
大佐は最近、忙しそうだからな…」
鼻筋に貌を擦り寄せて話しかける。
「…生憎、行けていないのだ。本当に多忙でね」
突然背後から聞こえた声に、間髪を入れずに振り返る。
「大佐…!」
嬉しさを抑えて、敬礼をする。
男は手を挙げて、それを制した。
「今はいい。…二人きりの時は、以前のように話そう」
「…はい…」
いいのかな…と、鬼塚は周りを見渡した。
平日の夕方の厩舎に人影などない。
鬼塚は安堵して、男に話しかける。
「大佐、お元気ですか?ずっとお会い出来なかったので心配していました。市ヶ谷の家には帰られていますか?
ヤエさんは元気ですか?…それから…」
男は何も答えずに鬼塚の手を掴み、強引に厩舎の中へと引き摺り込んだ。
「…た…大佐…?」
飼葉置き場の壁に背中を押しつけられる。
「…今城少尉とは親しいのか?」
貌を近づけられ、猛禽類のような強い眼差しに見据えられる。
「…え…?」
燻げに眼を瞬かせると、苛立ったように男は鬼塚の形の良い顎を掴み、唇を奪った。
「…ん…っ…!…あ…っ…んん…」
男の肉厚な舌が鬼塚の舌を探り当て、荒々しく絡めてくる。
口内の全てを蹂躙するような容赦ない口づけ…けれど、それが鬼塚に例えようもない濃厚な膿んだような快楽を齎すのだ…。
懐かしいその感覚に、鬼塚は我を忘れて男の首すじに両腕を絡め、情熱的に口づけに応える。
鬼塚の積極的な口づけに、男は安堵したかのようにそっと舌を解放し…強引に求めたことを詫びるように改めて抱きしめ、髪を優しく撫でた。
「…すまない…思わず…嫉妬してしまったのだ…」
「…嫉妬?」
怪訝そうな貌をする鬼塚に、苦々しげに告げる。
「…今城がお前にやたら馴れ馴れしくしているようだからな…」
「…あ…」
鬼塚はじわじわと湧き上がるくすぐったいような感情を抑え切れずに、男の頑丈な胸に抱きついた。
…男の馬の世話をしたいからだ。
男の馬は黒いアラブ種だ。
気難しくて男にしか懐いていないのだが、最近は鬼塚にも少しずつ心を開いてくれている。
鬼塚が近づくと、嬉しそうに嘶いた。
「元気にしていたか?アレス」
アレス…ギリシア神話で戦いを司る神の名前だと、男がいつだか教えてくれた。
鬣を撫で、林檎を食べさせてやる。
林檎はアレスの大好物だ。
「お前、最近遠乗りに連れて行って貰っているか?
大佐は最近、忙しそうだからな…」
鼻筋に貌を擦り寄せて話しかける。
「…生憎、行けていないのだ。本当に多忙でね」
突然背後から聞こえた声に、間髪を入れずに振り返る。
「大佐…!」
嬉しさを抑えて、敬礼をする。
男は手を挙げて、それを制した。
「今はいい。…二人きりの時は、以前のように話そう」
「…はい…」
いいのかな…と、鬼塚は周りを見渡した。
平日の夕方の厩舎に人影などない。
鬼塚は安堵して、男に話しかける。
「大佐、お元気ですか?ずっとお会い出来なかったので心配していました。市ヶ谷の家には帰られていますか?
ヤエさんは元気ですか?…それから…」
男は何も答えずに鬼塚の手を掴み、強引に厩舎の中へと引き摺り込んだ。
「…た…大佐…?」
飼葉置き場の壁に背中を押しつけられる。
「…今城少尉とは親しいのか?」
貌を近づけられ、猛禽類のような強い眼差しに見据えられる。
「…え…?」
燻げに眼を瞬かせると、苛立ったように男は鬼塚の形の良い顎を掴み、唇を奪った。
「…ん…っ…!…あ…っ…んん…」
男の肉厚な舌が鬼塚の舌を探り当て、荒々しく絡めてくる。
口内の全てを蹂躙するような容赦ない口づけ…けれど、それが鬼塚に例えようもない濃厚な膿んだような快楽を齎すのだ…。
懐かしいその感覚に、鬼塚は我を忘れて男の首すじに両腕を絡め、情熱的に口づけに応える。
鬼塚の積極的な口づけに、男は安堵したかのようにそっと舌を解放し…強引に求めたことを詫びるように改めて抱きしめ、髪を優しく撫でた。
「…すまない…思わず…嫉妬してしまったのだ…」
「…嫉妬?」
怪訝そうな貌をする鬼塚に、苦々しげに告げる。
「…今城がお前にやたら馴れ馴れしくしているようだからな…」
「…あ…」
鬼塚はじわじわと湧き上がるくすぐったいような感情を抑え切れずに、男の頑丈な胸に抱きついた。