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いつかの春に君と
第3章 永遠の花
「…鬼塚、この戦争に残されたものは取るに足らない軍の上層部のつまらぬプライドだけだ。
陸軍海軍、航空部隊のお偉方の将校が己れの保身と矜恃の為だけに戦いを止めようとしない。
陛下には全く真実を知らさずに…。
これからも多くの兵士が…それだけでなく何千何万の罪無き国民の血が流されるのだ。
…いや、もっと恐ろしい悲劇が待っているかもしれない。
僕はそんな馬鹿げた戦争を終わらせるために憲兵隊に入ったのだよ」
「…そんな…。じゃあ、貴方は一体何をなさっているのですか?」
今城は肩を竦めた。
「僕は真実を伝えているだけだ。
真実を伝え、一刻も早くこの下らない戦争を止める為の判断材料を元帥始め錚々たる軍の御大達に献上しているのさ。
…なかなかどうして…爺さん達はしぶといがね」
少し疲れたように今城は眉間のあたりを押さえた。

…そんな…。
どうしてみんな、そんなことを言うのだろう…。
まるで日本は戦争に負けて、すべてが終わりになるかのように…。
大佐も、このひとも…。

言葉を失くした鬼塚に、今城は穏やかに声を掛ける。
「…今から戦争が終わった時の自分を想像しておけ。
君はまだ若い。
この醜悪で最低な戦争の犠牲になるな」

鬼塚は拳を握りしめ、今城を睨み付けた。
「俺は信じません!日本が戦争に負けるなんて…そんなこと、信じない!
俺は…たった一人になっても、陛下をお守りする為に戦います!
戦争が終わったあとのことなんてどうでもいい!」
それだけを叫ぶと、鬼塚は今城の執務室を走り出た。



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