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いつかの春に君と
第3章 永遠の花
その日、鬼塚は半休を取り、銀座の街に出かけていた。
ジッポーのライターを買うためだ。

明日は男の誕生日だ。
鬼塚は男の誕生日を知らなかった。
男は教えてもくれなかった。
誕生日は先日、偶然に見た将校名簿で知ったのだ。

ジッポーのライターは今城が使っているのを見て、いいなと思ったのだ。
尋ねると今城は艶めいた眼差しで笑った。
「大佐にプレゼントかい?
いいなあ、大佐は愛されていて。
僕にはつれないのになあ…この綺麗なお付きのドーベルマンは」
そう言いながらも、プレゼントのアドバイスや店も紹介してくれたのだ。

銀座のその舶来品を扱う店で奮発して一番良いライターを買った。
給料の大半は無くなったが、鬼塚は満足だった。
男には今まで幼年士官学校の学費、その他様々な生活費を出して貰っていたがひとつも返せてはいなかった。

憲兵隊に入隊した時に、少しずつ返したいと申し出たのだが、一笑に付された。
「ひよっこは早く一人前の軍人になることだけを考えていれば良いのだ。金のことなど気にするな」

だからせめて、誕生日にプレゼントを贈りたかった。

洒落た黒い包装紙に金色のリボンをかけて貰った。
それを大切そうに上衣の隠しにしまい込みながら、鬼塚は憲兵隊本部に向かった。

…明日は大佐は非番のはずだ。
朝、これをそっと市ヶ谷の家に届けに行こう。
…驚いてくれるかな…。

鬼塚はひとり微笑んだ。
想像するだけで心が弾む。
…プレゼントを渡して…伝えよう。
俺がどれだけ大佐を愛しているか…。
答えはなくてもいい。
愛していることだけ伝えよう…。
ずっと一緒にいて欲しいと伝えよう…。
俺には大佐がいてくれたら、それでいいと…。
ほかには何もいらないと…。
…伝えよう…。
きっと、伝えよう…。

憲兵隊本部の階段を駆け上がろうとした時…。
階上から今城の緊迫した声が響いた。
今城が手摺につかまりながら、鬼塚に叫んだ。
「鬼塚!早く警察病院に行け!
…大佐が…撃たれた!」

…胸の隠しからプレゼントの箱が転がり落ち、鈍い音を立てた。

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