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第5章 ：Reverie-夢想-

　この威圧感は何だろう？　『ヒト』の中でもそういう空気を醸し出すことはあるが稀だ。『E地区』の男たちは皆、このような力を持っているのだろうか？　それとも私たち『ヒト』の方が感情が薄くなっているのか？　いや、違う。
　『ヒト』の感情って全部脳が支配しているのよ。”大脳辺縁系”と呼ばれるところでね。それを包み込むように”大脳新皮質”があって、それが理性をコントロールしているんですって。私たち『ヒト』はそれが発達しているから感情を抑えることができるの――
　以前に友人が話していた内容を思い出した私。彼は、彼ら『E地区』の男性たちは感情を知らない中で無意識に出してしまっている。そして抑えることができないのだ。彼らは感情がないのではない。使い方を理解していないだけだった。それは『ヒト』の成長過程でも必ず通る道だ。まだ幼い子ども達の脳は未発達であり、彼らはそのような子ども達と同じだということ。だからこうして自身の中に怒りという感情が現れると無意識に本能的に最大限に露わにするのだろう。
「あの、落ち着いて私の話を聞いてくれますか？」
　これから彼と暮らすのはとても大変だと私は感じる。なぜなら女性が初めて赤ちゃんを産み、新米ママとしてその子と向き合っていかなければならない状態と同じだから。
　まず落ち着かせなければ会話は成立しない。頭ごなしに怒鳴ってはならないのだ。お互いに目線を合わせて話をすることが一番重要。
「実は……」
　私は彼の前にちょこんと座り直して大きく息を吐いた後、静かに自分が考えていたことを話し始めることにした。


　彼女の話を聞いた俺の表情には、恐らく彼女にとっては不満を感じるような色を見せていただろう。俺には彼女が言っている意味がよく理解できなかった。だからそのような雰囲気を醸し出す表情を起こしていた。
　彼女がミスコンに参加しようとしている。それは多分もう既に彼女の中では決定済みなのかもしれない。しかし俺は反対だった。
　どうして自ら危険地帯に突進していこうとしているのかが分からない。そのようなことをすれば、犯人である主催者にとっては願ってもないことになる。なぜなら自ら動かずとも獲物が簡単に罠にかかってくれるからだ。彼女の気持ちは分かる。彼女の友人があのようなことになったのは自分のせいだと、それは彼女の携帯電話の記録から事実だと分かったからだ。