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Eternal
第7章 Carnival-祭り-
 これは恐らく私の過去のせいだ。親と一緒に暮らしていなくて、幼い頃から他人である周りと上手に付き合っていく為に必要な技だった。でも彼の次の一言で、私の全身の力が一気に抜ける。
「もう、俺の前ではそのような演技は必要ない」
 また泣いちゃう――
 でも、そうか…… この彼の前では泣いてもいいんだと思った私は、彼の革ジャンの襟を両手で強く掴むと顔を押し付けた。


 自動ドアが開く。病院内はあちらこちらに触らせないように全てがこのような仕組みになっている。だからドアにノブはない。声に反応するから見知らぬものは勝手に入ることは不可能。だから彼女は相手の男が帰って来たのだと思ったのだが、それは全くの勘違いだった。
「あなた……」
 息切れをしながら部屋の中に入って来る男の姿を見た彼女は目を見開いた。男はベッドの上の彼女を見つめながら片口端に微妙な吊り上げを起こした。
「また、役に立ってもらおうと思ってね」
 不気味な笑みを浮かべる男の姿を見ても彼女には全く恐怖を感じなかった。それは両手足を既に失くしているから? 
 違う。彼女はこの男に何か悲しみや苦しみを感じたのだ。それに手を差し伸べて助けてあげたいという、母性本能のようなものが内側に生じている。
「私の友人をまたおびき出すの?」
「そうだよ」
「どうして彼女に固執するの?」
「どうしてって、前に君にも言ったろ?」
「姿形はね、君の友人の方が僕の研究にうってつけなんだよ…… でしたよね?」
「よく覚えているねぇ」
 男はニヤリと笑うと、彼女の下半身を覆っている掛け布団を勢いよく捲った。手足がなくなるだけで『ヒト』の身体は不均衡である。それよりも不思議なのは、目の前の彼女が自分を全く恐れていないようだということ。手足がなくなり自由も奪われて絶望的になっているのかと思えばそうでもない。彼女の瞳の奥には攫われても別に構わないみたいな、どうぞご自由にとでも言っているような、こちらが気圧されてしまいそうな強い光を宿している。しかしもう後には引けない。自分はここまで来てしまったのだ。どうしても彼女の友人の身体が欲しい。
 数分後、この部屋には誰もいなくなった。  
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