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Eternal
第3章 :confusion-混乱-

「おい、立てるか?」
くぐもった声音と同時に片耳に当てていた人差し指が添えつけられているその手を私の目の前に差し出してくる。
「ええ……」
私はようやく咳が止まると、両手で軽く頬を叩いてからその男が差し出してきた手に自分のそれを添えようと思ったのだが、何を気にしたかすぐにその手を引っ込めた。
「どうした?」
「手が……」
「手が、何?」
私は引っ込めたその手を服の端でごしごしと擦った。喉元からあの男の手が離れた後に咳き込んでいた為にその手は唾液がついていたし、今さっきは涙で濡れた頬を軽く叩いた為に、その男の手に添えるのはいくら何でも失礼だろうと思って躊躇ったのだ。しかし男はそれを理解しなかったようで、差し出した片手を私の腕に絡ませて掴むとその場に勢いよく立たせてきた。
私は女性にしては背高い方だ。しかし目の前のこの男はかなりの背丈なのだろう。私が普通に立っていても顔はちょうど胸辺りだった。お礼を伝える時は相手の目をしっかりと見るというマナーを幼い頃に教えられていた私が顔を上に向けると、街灯の下であった為に男の顔がはっきりと確認できた。
白い肌に美しく手入れされた眉の下には切れ長の形良い目。その奥は漆黒で暗闇の中で見ていると、まるで抜け出せない闇の中にいるような感覚を起こす。でもそれは恐らく、先ほどの男と同じくその漆黒の瞳の中に感情というものがないと私が感じたからなのだろう。鼻筋は途中までしか分からない。そして口元なんて全くだ。なぜならその男の顔半分は白いマフラーで隠されていたのだから。
「あ、ありがとうございました」
そう、助けてもらったお礼をと私が感謝の意の言葉を述べる。と、男はそれに対して何の返事もせずに、やはり無表情のままで私を見つめてきたその時、ボンッと私と男のすぐ傍で小さな爆発音が鳴り、同時にその音の方へと視線を落とす。
「あの、これ…… これはどう見ても『ヒト』じゃないですよね?」
私の問い掛けがよほど間抜けだったのだろうか。男は傍にある『モノ』に向かって顎をしゃくると、白いマフラーを上下に皺を寄せさせた。
「どう見ても『ヒト』じゃないだろ? お前にはこれが自分と同じだと思えるのか?」
「い、いえ…… 思いません、思えません……」
くぐもった声音と同時に片耳に当てていた人差し指が添えつけられているその手を私の目の前に差し出してくる。
「ええ……」
私はようやく咳が止まると、両手で軽く頬を叩いてからその男が差し出してきた手に自分のそれを添えようと思ったのだが、何を気にしたかすぐにその手を引っ込めた。
「どうした?」
「手が……」
「手が、何?」
私は引っ込めたその手を服の端でごしごしと擦った。喉元からあの男の手が離れた後に咳き込んでいた為にその手は唾液がついていたし、今さっきは涙で濡れた頬を軽く叩いた為に、その男の手に添えるのはいくら何でも失礼だろうと思って躊躇ったのだ。しかし男はそれを理解しなかったようで、差し出した片手を私の腕に絡ませて掴むとその場に勢いよく立たせてきた。
私は女性にしては背高い方だ。しかし目の前のこの男はかなりの背丈なのだろう。私が普通に立っていても顔はちょうど胸辺りだった。お礼を伝える時は相手の目をしっかりと見るというマナーを幼い頃に教えられていた私が顔を上に向けると、街灯の下であった為に男の顔がはっきりと確認できた。
白い肌に美しく手入れされた眉の下には切れ長の形良い目。その奥は漆黒で暗闇の中で見ていると、まるで抜け出せない闇の中にいるような感覚を起こす。でもそれは恐らく、先ほどの男と同じくその漆黒の瞳の中に感情というものがないと私が感じたからなのだろう。鼻筋は途中までしか分からない。そして口元なんて全くだ。なぜならその男の顔半分は白いマフラーで隠されていたのだから。
「あ、ありがとうございました」
そう、助けてもらったお礼をと私が感謝の意の言葉を述べる。と、男はそれに対して何の返事もせずに、やはり無表情のままで私を見つめてきたその時、ボンッと私と男のすぐ傍で小さな爆発音が鳴り、同時にその音の方へと視線を落とす。
「あの、これ…… これはどう見ても『ヒト』じゃないですよね?」
私の問い掛けがよほど間抜けだったのだろうか。男は傍にある『モノ』に向かって顎をしゃくると、白いマフラーを上下に皺を寄せさせた。
「どう見ても『ヒト』じゃないだろ? お前にはこれが自分と同じだと思えるのか?」
「い、いえ…… 思いません、思えません……」

