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Eternal
第3章 :confusion-混乱-

気持ちが動揺していたのもあるが、確かに馬鹿みたいな質問をしてしまったと、私はこの寒空の中では映し出さないはずの赤みが顔全体を覆い始めた感触を覚えた。恐らくその色は街灯の下で男の瞳の中にはっきりと刻み込んだだろう。男は少しだけ目元の筋肉を動かして表情を変化させた。
「どうした?」
男の掌が私の赤みを帯びた頬を撫でる。先ほどは腕を掴まれたから分からなかった。その時の男の手は布越しに触れたのだから。しかし今は違う。しっかりと私の地肌にそれが触れているのだ。その掌に頬を撫でられるままに、私の頬が生温く濡れる。
喉元を押し潰されそうになった時の恐怖が今になって脳裏に蘇る。目の前で笑いながら私の心臓を止めようとした『モノ』は私と同じ『ヒト』ではなかったのだ。この一年近く、私はその『モノ』の存在に全く気がつかなかった。いや、違和感を感じたものの気がつかないようにしていたのかもしれないが疑問は持っていたのだ。ただ確信したのがつい先ほどというわけだ。しかしまさか『ヒト』の形をしたロボットだったなど誰が想像する? 普通に接していても少しの違和感を抱くだけで、今日までずっと交流を続けていたのだ。このような『モノ』は私たちの日常の周りに多く存在しているのだろうかと、次々と数多の疑問が私の脳裏で浮かび上がる。そのような中で安堵の感情もあり、恐怖とはまた異なる涙が再び零れ落ちようとした時、その男の掌がそれをそっと拭ってくれた。この時に私は感じたのだ。
その男の掌の熱を――
「あ……」
男は私の頬から掌を離した瞬間、小さく声を上げた。
「人工血液がついてたのか、悪い……」
そう呟いた男が自分の服の袖で私の頬を拭おうとするが、服が汚れるからと私がその仕草に遠慮をするようにその個所に手を向けると、今度は目元に違う変化を起こした。
「服の色は黒だから目立たない」
そう言って、遠慮しようとした私の手を軽く押しのけて拭ってくれた。
「あ、ありがとうございます……」
少し俯き加減になりながらも小さな声で二度目の礼の言葉を放った私の視線は足裏をつけている道の上へ。そしてその男の指先から血が滴り落ちているのを確認した。
「怪我をしています」
私は迷うことなく男のその手を掴んだ。
「私、あのマンションに住んでいるんです。良かったらお礼の代わりに手当てをさせて下さい」
「どうした?」
男の掌が私の赤みを帯びた頬を撫でる。先ほどは腕を掴まれたから分からなかった。その時の男の手は布越しに触れたのだから。しかし今は違う。しっかりと私の地肌にそれが触れているのだ。その掌に頬を撫でられるままに、私の頬が生温く濡れる。
喉元を押し潰されそうになった時の恐怖が今になって脳裏に蘇る。目の前で笑いながら私の心臓を止めようとした『モノ』は私と同じ『ヒト』ではなかったのだ。この一年近く、私はその『モノ』の存在に全く気がつかなかった。いや、違和感を感じたものの気がつかないようにしていたのかもしれないが疑問は持っていたのだ。ただ確信したのがつい先ほどというわけだ。しかしまさか『ヒト』の形をしたロボットだったなど誰が想像する? 普通に接していても少しの違和感を抱くだけで、今日までずっと交流を続けていたのだ。このような『モノ』は私たちの日常の周りに多く存在しているのだろうかと、次々と数多の疑問が私の脳裏で浮かび上がる。そのような中で安堵の感情もあり、恐怖とはまた異なる涙が再び零れ落ちようとした時、その男の掌がそれをそっと拭ってくれた。この時に私は感じたのだ。
その男の掌の熱を――
「あ……」
男は私の頬から掌を離した瞬間、小さく声を上げた。
「人工血液がついてたのか、悪い……」
そう呟いた男が自分の服の袖で私の頬を拭おうとするが、服が汚れるからと私がその仕草に遠慮をするようにその個所に手を向けると、今度は目元に違う変化を起こした。
「服の色は黒だから目立たない」
そう言って、遠慮しようとした私の手を軽く押しのけて拭ってくれた。
「あ、ありがとうございます……」
少し俯き加減になりながらも小さな声で二度目の礼の言葉を放った私の視線は足裏をつけている道の上へ。そしてその男の指先から血が滴り落ちているのを確認した。
「怪我をしています」
私は迷うことなく男のその手を掴んだ。
「私、あのマンションに住んでいるんです。良かったらお礼の代わりに手当てをさせて下さい」

