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女鑑~おんなかがみ~
第16章 献身
身体の奥を引き裂くような痛みは身体の奥を猛烈な勢いで往復し,小紫は,このように身体を引き裂かれても意識を保っている自分を疎ましく思った。このまま気を失ってしまえたらどんなに楽だろうか,いっそのことこのまま死ねたらよいのにとまで思ったが,結局は痛みに慣れることも,気を失うこともできないまま声を殺して耐え続けた。

「若いのになんと気丈な子やろ。そのうえ肝心の奥の締まり具合も最高や。こんな一級品の武士の娘の初物を,わしらみたいな卑しい商人が金を積んで味わえるとは,ご維新とはなんとありがたいものか。ワシの店の蔵にある反物,全部お前にやっても惜しくないわ」

…これは褒められているのだろうか。それなら礼を言わなければ‥‥
ようやく身体が解放された小紫が慌てて身体を起こそうとすると,脚の間から白くぬめぬめした液と真っ赤な血とが大量に流れだした。
このような汚いものを旦那様にお見せしてはいけないと思って懐紙でそこらを拭いているうちに気が遠くなってきた。
「初めてやねから,そんなことまで気を遣わんと,そのまま寝てたらええ。さっきは痛かったやろ。
しばらくは踊りも三味も休んで三日ほど上げ膳据え膳で休んだかって,誰も怒らへん」
そういわれると意地でも横になどなる気にはなれず,
「もうお気遣いいただかんで結構です。こんな格好で部屋の外にでるのはいやどすさかい,お手間かけて悪いですけど,この着物,着つけ直しておくれやす」と頼んだ。

数日は厠に行くのにも不自由するほどだったが,それを悟られまいと必死になって,踊りの稽古にも休まず通った。
しかし身体はそれより正直だったのか,しばらくは食べ物が喉を通らなくなった。さらに三日後に,明日も旦那様がくるのでそのつもりでいるようにと言われたときには,蕁麻疹まで出そうになった。
さすがにねえさんたちも心配して,今回くらいは熱がでたってお断りしたらいい,と言ってくれたが,小紫は「お気遣いなく」と言って今度は心づもりをして旦那さまを迎えた。

そのようなことを繰り返すうち,小紫は徐々にこの行為がそれほどは辛いと思わなくなった。輝虎のためにこのような務めに耐えている自分が誇らしくさえ感じられるようになった。
そんなときにこの旦那様が花見の計画を持ち出したのだ。
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