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女鑑~おんなかがみ~
第11章 嗜虐
翌日に東京に戻り,仕事をしていると,若槻は大臣から呼び出された。
「若槻君,前に話していた,君をを千賀子の婿にという話は,なかったことにしてほしい。まあ,まだ正式な婚約をしたわけでもないしな。
あのあと,少し調べさせてもらったよ。
儂の馴染みが君の実の姉だっだとはね。」
「いえ,それは,姉は幼いころに養女になって家を離れているので戸籍上は・・・・」
「それはわかっているよ。だが,血のつながりはあるんだろう。
何しろ,娘の千賀子は,ミッション式の女学校に通っているもので,何かと潔癖でね。
芸妓のような,あちこちの男と情を通じるような女が義理の姉になるというのは,耐えられないそうなんだよ。」
「あちこちの男と情を通じる・・・・・・」
若槻は絶句した。
大臣と同じく公家の出身であるというふくよかで上品な妻や,ガーデン・パーティで若槻になついていた娘の千賀子は,父が関西出張のたびに芸妓と関係を持ち,落籍せて店まで持たせようとしているのは知っているのだろうか。

………
その後,若槻は大臣から遠ざけられた。ガーデン・パーティに呼ばれることもなくなり,別の部署に配置転換となった。これまで若槻が大臣に可愛がられていることをねたんでいた同僚からは,根も葉もないうわさが出るようになった。

ほどなくして,若槻は官職を辞した。


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