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女鑑~おんなかがみ~
第11章 嗜虐
「あのときほど,弟をもったことを恨んだ日はないよ。
頭に包帯をぐるぐる巻きにして座敷に来られてね。
本来なら殺人未遂となるところだが,小紫に免じて不問に付してやろうと仰ったよ。
まあ,大方,貸しを作りたかっただけだろうけどね。
後から,交番の巡査にも一度お目にかかったけれど,長唄だか歌舞伎だかの松の廊下を真似る面白い少年だと笑っておられたものだから,恥ずかしくてしょうがない。
剣道用の竹刀を振り回して河原の石をぶつけた挙句,「討ち損じたるは無念残念」などと叫んでいたらしいね。」

輝虎はそのとき,確か一晩は交番に留め置かれ,翌日に迎えにきた母親に連れられて帰宅したのち,父親にしこたま殴られたことを覚えている。
しばらくは,告訴されたらどうなるかと両親とも不安そうにしていたようだが,それでも輝虎は,こんなことなら床の間に飾ってある本物の刀を持っていけばよかったとばかり悔やんでいた。

しばらくして,被害者の恩情により不問となったことを父から聞かされた。父が持ち帰った書類には「入学試験に対する不安による神経衰弱のため前後不覚となり,河原で偶然に遭遇した被害者に対し,芝居の刃傷場面の再現を試み・・・」となどと,あまりにもかけ離れたことが書かれていた。入学試験を不安に思ったことも前後不覚に陥ったこともないのにと,悔しがったがどうにもならなかった。

**********************
「そりゃ,切腹覚悟の仇討ち,のつもりだったお前は怒るだろうがね。
あのときはもう,みやこ呉服さんにお世話になるようになって一年だろ。
まだ十四かそこらだったけど,あの旦那さまが恋しくてたまらないような身体になっていたんだよ。」
姉はいたずらっぽく笑いながら言った。
「…姉上さま・・・」
「だから,頭に包帯を巻いて来られたときはまず,もし旦那さまがお亡くなりになったら,もう抱いていただけない,そうなったらこの身体が切なくて寂しくて,どうしたらいいんだろうと思ったんだ。
まあ,あの旦那さまもひどい人だからね。告訴しないで許してやるぞと恩着せがましくして,こっちに借りを作らせようという魂胆だったんだろう。
けれど,こっちは,そうやって借りを作らせられて,踊りや三味の稽古もままならなくなるほど,毎晩責められるのが,少し嬉しかったんだよ。」
輝虎は,どう返事をしたらよいのかわからなかった。
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