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女鑑~おんなかがみ~
第12章 貞操
女学校の修身では,柔順と孝行と貞操が大切なのだと常に教えられてきた。
親や教師の言うことを聞く娘は幸せになるが,逆らって我を通そうとするとみんなが不幸になるという物語や,病気の親のために看病をする娘の物語が教科書にはよく登場した。優等生であった操子もそれを疑ったことはなかった。親や先生には逆らったことがなかったし,親のために少しでも役に立とうと思ってきた。

しかし,貞操については何を習ったのだろうか。
夫を敬愛し夫に尽くすことが大切だと習った。そして結婚前においても貞操を守らなければならないので,男に声をかけられたり手紙をもらったりするような隙を見せてはならないのだと習った。だから,恋愛というようなものは,最も危険なものだと信じて疑わなかった。

幼い日の操子は,貞操とはなにかもわからぬまま,そして誰のために守るのかもわからぬまま,ただ,兄に負けない優等生,自慢の娘でいるために,貞操を守るのだと思っていたのだった。

「操子ちゃんは,本当にいい子だね。きっと早くいいお嫁さんになるよ」
父や祖父を訪ねてきた客たちは,操子を見ると誰もがそのような世辞を言った。父もそう言われると鼻が高い様子なのが見て取れた。操子は,そのように褒められるのが嬉しく,茶道,華道,お琴,裁縫といった習い事に精を出し,行儀よく振舞い続けた。
「こんなきれいなお嬢さんなら,変な虫が付かないうちに片づけたほうがよさそうですな」
「まったくです。どこかよさそうな嫁ぎ先があれば是非ご紹介ください。幸いこの子は,生意気な息子とは違って,お父さまの決めたところならどこでも行くと申しておりますので。」

そんなときに,兄だけが唯一反論した。
「お父さま,片付ける,という言い方は聞き捨てなりません。女も品物ではなく,人格のある人間です。今や,欧米では婦人にも参政権がある時代だというのに・・・。お父さまは旧態依然だ。
操子,お前はどこへも嫁ぐな。女学校を出てから職業婦人になればよい」
「孝秀はまた生意気を。それでは一生貞操を守って尼にでもなれというのか。」

・・・そんな会話を聞きながら,操子は,自らを父の道具として捨てるということに,倒錯的な憧れを抱くようになっていた。

古の時代には行われていたとされる人身御供の伝説,大蛇や怪物に捧げられる娘,といったものに,自分でもなぜかわからぬまま惹きつけられた。
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