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女鑑~おんなかがみ~
第12章 貞操
朝帰りの客を送り出した夕顔が部屋に戻ってきた。
「お姉さん,お疲れでしょう。」
操子は炊事場のタケさんのところからご飯をもらってきて茶漬けを出した。
「気が利くのね。ありがとう。いい嫁さんになるわ」
「・・・ありがとうございます」
「この前,千鳥姉さんとも話してたんだけれど,操子ちゃんは,せっかくいいとこのお嬢さんなんだから,このまま,下働きだけして,どこかもうちょっと堅い店に移って女中でもすれば,傷物にならないで嫁に行けるのに。
千鳥姉さんから聞いたんだけれど,自分もお客を取りたい,私たちみたいな女郎になりたいって,わざわざ言いに行ったんだって。どうしてまた・・・」
「・・・すみません」
「いや,謝らなくてよいのよ。
朱音ちゃんが身請けされていなくなってからは,みんな忙しいしね。
あんたもお客をとってくれたらありがたいのはありがたいけれど。
でも,操子ちゃんは,本当はそういうのは嫌いでしょう。
わたしなんかは,子供のときから男女が何をするかもよく知っていたし,
早く売り物になりたいって思っていたような女だからね。
それでも,やっぱり最初は辛いし,今でも,辛いときもあるからね。
・・・・・・
お兄様のことで,私に負い目をもっているのなら,そんなことは気にしなくていいんだよ。
仮にあの手紙をちゃんと渡してくれても,同じ結果になったと思うからね」
「・・・・・いえ,そういうことではありませんから」
操子は言葉少なに答えた。
どう説明すればよいのかわからないのだ。
「・・・それならよいのだけれど・・・。お客が胸や腰に少し悪戯しただけでも辛そうだから,心配でね。」
「あ,この前は,申し訳ありませんでした。大丈夫です」
そうしていると,千鳥姉さんが慌ただしく部屋に入ってきた。
「女将さんがね,明日から一週間ほど,法事を兼ねて里帰りをなさるのでお留守になるの。だから,しばらくは私が女将さんの代わりをします。
それから・・・・,急で悪いのだけれど・・・。
操子ちゃんは明日からここでは葵(あおい)という源氏名になって,明後日に水揚げ,最初のお客のお相手をしてもらいます。
お相手は若槻さんといって,操子ちゃんがここに来る手筈を整えた人,操子ちゃんは会ったことがあるのよね。女将さんの古いお知り合いの方。
女将さんったら,急にいろいろ決めて出ていっちゃうから・・・・・」
「お姉さん,お疲れでしょう。」
操子は炊事場のタケさんのところからご飯をもらってきて茶漬けを出した。
「気が利くのね。ありがとう。いい嫁さんになるわ」
「・・・ありがとうございます」
「この前,千鳥姉さんとも話してたんだけれど,操子ちゃんは,せっかくいいとこのお嬢さんなんだから,このまま,下働きだけして,どこかもうちょっと堅い店に移って女中でもすれば,傷物にならないで嫁に行けるのに。
千鳥姉さんから聞いたんだけれど,自分もお客を取りたい,私たちみたいな女郎になりたいって,わざわざ言いに行ったんだって。どうしてまた・・・」
「・・・すみません」
「いや,謝らなくてよいのよ。
朱音ちゃんが身請けされていなくなってからは,みんな忙しいしね。
あんたもお客をとってくれたらありがたいのはありがたいけれど。
でも,操子ちゃんは,本当はそういうのは嫌いでしょう。
わたしなんかは,子供のときから男女が何をするかもよく知っていたし,
早く売り物になりたいって思っていたような女だからね。
それでも,やっぱり最初は辛いし,今でも,辛いときもあるからね。
・・・・・・
お兄様のことで,私に負い目をもっているのなら,そんなことは気にしなくていいんだよ。
仮にあの手紙をちゃんと渡してくれても,同じ結果になったと思うからね」
「・・・・・いえ,そういうことではありませんから」
操子は言葉少なに答えた。
どう説明すればよいのかわからないのだ。
「・・・それならよいのだけれど・・・。お客が胸や腰に少し悪戯しただけでも辛そうだから,心配でね。」
「あ,この前は,申し訳ありませんでした。大丈夫です」
そうしていると,千鳥姉さんが慌ただしく部屋に入ってきた。
「女将さんがね,明日から一週間ほど,法事を兼ねて里帰りをなさるのでお留守になるの。だから,しばらくは私が女将さんの代わりをします。
それから・・・・,急で悪いのだけれど・・・。
操子ちゃんは明日からここでは葵(あおい)という源氏名になって,明後日に水揚げ,最初のお客のお相手をしてもらいます。
お相手は若槻さんといって,操子ちゃんがここに来る手筈を整えた人,操子ちゃんは会ったことがあるのよね。女将さんの古いお知り合いの方。
女将さんったら,急にいろいろ決めて出ていっちゃうから・・・・・」