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第16章 失

『行ってらっしゃい』

彼女に見送られて車を走らせる。

下道でも充分間に合う。

案外近いもんやな…


そう思いながら買った
ブラックコーヒーを飲みハンドルを握る。

" 結婚もいいもんやで "

ユーヤの言葉を思い出す。

そして浮かぶのはリナの顔
…俺どしたんやろ？…らしくない。


そんな事を考えているうちに
工房が入るビルが見える。

工房の近くのパーキングに車を停め
歩いていく。

扉を開けると

『おはよ』

そう言ってアイが微笑んだ。

『おぉ。おはよ』

何となく目を合わせられない。

別に恋人でもないのに。

目を移せば

『よーっす』

『おはよー』