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つきよの相手
第2章 結婚の日
「お誕生日おめでとうございます、玲さま」
 朝、布団の上で目を覚ますと、そばで羽瀬が正座していた。
 いつもとは違う、正装でかしこまっている。
「えっと……おはよう」
「おはようございます。無事にすべてを身につけて付夜になられますこと、わたくしも誇らしく思います」
 二十歳の誕生日は、俺にとってこのうえなく特別な日だった。
「夕方には、高崎家のご一行が到着なさいます。顔合わせとお食事の後は、旦那様だけ残られるので、一夜を過ごしてから、高崎さまのお屋敷に行かれますよう」
 男女の結婚ではないから、式などは行われない。
 相手は次男で、家を継ぐこともないと聞かされた。
 付夜をあてがわれるのは昔から、家の存続に関係ない者と決まっている。
 俺は朝から風呂に入って身体をすみずみまで洗い、香水をつけて待っていた。
 どんな人に引き合わされるんだろう。付夜に拒否権はない。相手がどんな男であっても。


 やがて、家の前に車が到着し、高崎家の一行が降りてきた。
「高崎さま、お待ちしておりました」
「あぁ」
 最初に現れたのは、高崎家の当主。
「きみが、玲くんか」
 俺を見て、優しい声で言った。グレーの髪の、穏やかな印象の紳士だった。
「はい」
 俺は戸惑いながらうなずいた。
「息子と仲良くしてやってくれ」
「はい!」
 その後に秘書や執事らしき男性たちが続いて、車のドアは閉められた。
「ご子息様は……」
 羽瀬が尋ねると、当主は苦笑した。
「寝坊したんだ。こんなだいじな日に。昨夜は友人と飲んでいたようでね、昼すぎになっても起きてこなかった。本当に申し訳ない」
 俺はがっかりしたけれど、来てくれると信じて待つことにした。
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