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つきよの相手
第2章 結婚の日
 食事の間、高崎さまと秘書の前田さんがいろいろ話をしてくれて、俺は付夜としてこの家と縁を持ててよかったな、と思った。
「息子はまだ来ないが、しきたりだから我々は失礼するよ。玲くん、本当にすまない」
 帰り際にも申し訳なさそうな顔で言った彼らが帰った後、俺は一人で床に入った。
 二人で最初の一夜を過ごすはずだったのに。
 月が縁側から射し込んでも、隣はからのまま。
 旦那様は、俺に逢いたくないのかな。
 まだ、名前すら知らない。
 羽瀬の気配もなくなった後、寂しさが押しよせてきて、目を閉じたら涙が溢れてきた。
 泣いちゃダメだ。泣いちゃダメなのに。
 ひく、としゃくりあげたら、嗚咽が寝室に響いた。
 枕に顔を押し付け、ひとしきり泣きたい気持ちが治まるのを待っていたら、ふいにぎしりと畳が軋んだ。
(え……)
 暗闇の中、誰かが布団に潜り込んでくる。
 性急に夜着の上からまさぐられ、そのうち滑り込んできた指が肌にじかに触れて。
 誰、と訊こうとした口唇を塞がれる。舌が絡み合った。
 助けて、と言おうとしても言葉は出ない。
「ん、ぅっ」
 そのまま体温の高い相手に貪り尽され、呼吸が奪われてしまいそうなところでやっと解放された。
「おまえが、俺の付夜か」
 顔もはっきりしない闇の中で問われる。
 まさか、この人が旦那様?
「はい」 
 うなずいたら、抱きすくめられた。
「俺は志希。おまえは」
「玲です」
「玲か。小宵から、よろしく」
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