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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第9章 決別の決心
一睡も出来ずに、ベッドに座ったまま夜が明ける。
もうすぐ、和哉の出勤時間。
本当に、嫌われてしまった。
それは、私が一番恐れていたこと。だが、真実は曲げようがない。真実を話さなければ、私はこの先も重い十字架を背負って生きるようなもの。
彼に嫌われただけではない。傷付けてもしまった。
ノックの音。
「朝食、ドアの横に、置いて、いくから……」
和哉の声を聞き、すぐにでもドアを開けてしがみつきたいと思ってしまう。だが今の私には、そんな権利もなくなってしまった。
彼もそれだけで、ドアを開けようとはしない。鍵など付いていないのに。
暫く待ってから、廊下を見た。
お盆に載っているのは、不格好なハムエッグと、トースト。それに、彼が淹れただろうコーヒー。全て冷めていたが、それは関係なく、食欲は無い。
部屋へ入り、また暫く経ってからお盆を持って階下へ行く。
和哉の姿はなく、もう出勤したのだろう。
ガランとしたリビング。
それが、今まで以上に淋しい。
キッチンへお盆を置くと、シャワーを浴びた。その合間に洗濯。乾燥機を使えば、すぐに乾かせる。
乾いた自分の洗濯物と冷蔵庫の水を持ち、部屋に戻った。
黄ばんでいた5年前の衣類は、既に廃棄済み。今キャリーバッグの中にあるのは、4百80万ほど。そこから財布に入れ、50万にしておいた。
まずは不動産屋へ行き、早くマンションを借りなければ。住所不定では、どこにも雇ってもらえない。
最初は暫くホテルで休もうと思っていたが、もう充分に休めた。
タンスや棚から出した私物をキャリーバッグに詰め、外出着に着替えてリビングへ行く。和哉から貰ったバッグとともに。
ソファーに座り考えをまとめていたが、いつの間にか眠ってしまっていた。昨夜、一睡もしなかったせいだろう。
「梨香っ……」
気が付くと、リビングの入口に彼が立っていた。今会社から戻ったのだろう、スーツ姿のまま。
窓の外へ視線をやると、もうすっかり暮れている。
和哉は急いで入って来たよう。室内の灯りが点いていたから、まだ私が出て行っていないと解ったのだろう。
早く、追い出したいはず。
私は溜息をついてから、彼を見つめる。