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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第9章  決別の決心


「座って、ください……」
「あ、ああ……」
 和哉が、ゆっくりと向かいへ座った。
「全部、話します。今までの、ことを……」
 緊張しているのか、彼は動かないまま。
 私の覚悟は出来ている。
 不良娘だった14歳から、オークションで買われた屋敷を出るまでのことを、全て包み隠さず話した。
 和哉は俯いたまま、ずっと聞いてくれている。
「300万と、闇金の分、僕が、出したのに……」
 優しい彼ならそう言うだろう。だがあの時は、そこまで頼れなかった。頼れば、店の実態を知られてしまうと考えたから。
 話し終えると、彼の深い溜息。
 それはそうだろう。まだ21歳で、色々な男と寝てきた。
 幻滅されて当然。
 あの“可愛らしい梨香ちゃん”は、実際には存在していなかった。
 彼が愛したのは、幻の“梨香”
 話すことが多すぎて、2時間ほどかかってしまったが、これでもう、隠し事はない。
「お世話に、なりました……」
 ソファーから立ち上がり、頭を下げる。
「え……」
「すぐ、出て行きます。でも、これだけは、持って行かせてください。思い出に……」
 和哉から貰ったバッグを、手に取った。
「全部話してから、出て行った方が、いいと思って。それに、お礼も言いたくて……。待ってた、だけですから……」
 キャリーバッグを掴んで玄関へ行こうとすると、彼も立ち上がる。
「待って……。ありがとう……」
「え?」
 何の礼だか、解らない。
 私は過去を隠し、和哉を騙そうとしていたのに。
「全部、話してくれて、ありがとう……。ずっと、つらかったんだね……」
 傍に来た彼に、腕を掴まれた。
「僕のこと、ずっと、想って、くれてたのは、嘘なの?」
「それは……」
 言葉に詰まる。
 嘘ではない。初めて会った時に好意を持ち、いつの間にか本当に好きになっていた。
 態度には出さなかったが、つらい屋敷での生活。その時も、和哉のことを想い励みにしてきた。
 もう会える人ではないと、解っていながらも。
「僕は、ずっと、待ってたんだよ……」
 それは解っている。自分が呑まないビールを5年も用意し続け、私を待っていてくれた。
 だが彼が待っていたのは、嘘に包まれた“梨香ちゃん”。現実の私は、汚れきった梨香。


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