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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第9章 決別の決心
「それは、嘘じゃ、ありません。でも……」
「でも?」
和哉は、腕を離してくれない。
「私に、あなたを好きになる、権利は、ありませんから……」
「どう、して?」
これ以上、何と言えばいいのか解らない。
「権利って、何? 人を、好きになるのに、権利なんて、関係、ないよね?」
泣くのを堪えた。
最後まで、優しすぎる人。
そんな人に、これ以上迷惑はかけられない。
最初から、来なければ良かった。そうすれば、彼もいつかは諦めていただろう。
私も昔のことだと、いい思い出のままだったのに。
全てを話した今、もう一緒にはいられない。
「梨香……」
腕を引き寄せられ、抱きしめられた。
「あの店の、裏のことを、知ってて、わざと黙ってた……。梨香の口から、全部、正直に、聞きたかったから……」
彼の腕に、力が入る。
「放したくない……。これからは、僕が、梨香を、守るから……」
「和、哉……」
私はキャリーバッグから手を離し、貰ったバッグも落として抱き着いた。
もう我慢出来ず、声を上げて泣く。
子供のように。
あの、ラブホでのように。
腕を緩めた和哉が、優しく背中を撫でてくれる。
私の選択は、間違っていなかった。
最初は一目見たくて、近くまで来てしまっただけ。だが姿を見たら、名前を叫ばずにはいられなかった。
心に嘘はつけない。
5年経って見た目も代わり、汚れてしまった。それでも、和哉が好きなことだけは変わらない。
「昨夜は、ごめん……。何だか、悔しくて……」
昨夜の、無理矢理犯すようなセックスのことだろう。
そんな風に扱われても、和哉を好きなことに代りはない。
「僕の傍に、いてくれる? いて、欲しい……」
私は泣きながら、その言葉に何度も頷いた。
その晩はデリバリーの夕食を一緒に摂り、シャワーの後、同じベッドへ入る。
キャリーバッグと貰ったバッグは、元の位置。
まだ荷物は入ったままだが、片付けは明日でいい。今はこの温もりに、抱きしめられていたかった。
時々、軽いキスを交わす。それはセックスへと進むものではなく、改めて愛情を確かめる行為。
和哉はもう、昔のことを訊いてこない。
それが、彼の優しさ。
その優しさに包まれながら、ゆっくりと眠りに落ちて行った。