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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第4章  不思議な感情


「着いたよ。少し、遅れちゃったね……。5分過ぎてるから、急ごうか」
 私の店がある、雑居ビルの前。
 支払いをする瀧澤を横目に、タクシーを降りた。
「え……」
 私は、雑居ビルへ入ろうとする瀧澤を、呆然と見つめてしまう。
「どうしたの? ここで、間違いないよね……」
 彼も、不思議そうに見つめ返してくる。
「あっ、はい……」
 それだけしか、言えない。
 もう人通りのある道で、ラブホやセックスなどと口には出せないし、知らないかもしれない青年が一緒にいる。
 3人でエレベーターに乗り、店へ着いた。
「いらっしゃいませー! 2名様、ご案内です!」
「2名様。いらっしゃいませ!」
 いつもの調子で、黒服が瀧澤達をフロアへ案内していく。私はまだ不思議ながらも、更衣室へ向かった。
 途中のソファーには、数人の女の子。
「おはようございます」
「おはよう、梨香ちゃん」
 通り過ぎようとすると、2人が支配人に呼ばれて行く。多分、瀧澤達の席だろう。私の支度が整うまでの“繋ぎ”。
 私も入ったばかりの頃は、そうやって、繋ぎばかりをさせられていた。
 指名の女の子が、他の指名席へ行く時もそう。出来るだけ客の人数分、空いている子をつけておく。
 急いで着替え、瀧澤達の席に着いた。
 こんなことは珍しい。殆どの女の子が、同伴して来ても、着替えてから10分くらいは更衣室で休んで行く。それが、当たり前となっていた。
「おじゃましまーす」
 一応支配人に連れられて行くのもルール。
 私が着くと同時に、女の子の1人が別の席へ移る。そうやって店は回っていた。だから指名の少ない子でも、店には貴重な存在となる。
 頼んだビールが届いてから、3人で乾杯。
 タクシーに乗って来た彼は、木村(きむら)だと紹介された。
 28歳だが優秀で、瀧澤の課で働いているそうだ。
「梨香さんを、お借りします」
 心の中では「もう?」と思ったが、口にはせず笑顔で謝ってから席を移る。
 何度か着いたことのある客。いきなりアフターを訊かれたから、OKした。
 瀧澤としなかった分、体は少し楽。
 少しして瀧澤達の席へ戻る。色々と話せたが、2時間ほどで帰ってしまい、私はエレベーターの前で見送った。


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