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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第4章 不思議な感情
高級店が好きだと、勘違いしているのだろう。
「こういうお店、凄く好きです。高級フレンチとか、緊張しちゃって」
誤魔化すように言いながら、届いたレモンハイを呑む。
「じゃあ、この前の中華も、緊張、させちゃったかな……」
「いいえ。中華は、特別なマナーも無いし。瀧澤さんと一緒で、楽しかったです」
彼は、苦笑いをしていた。その意味は解らない。
「失礼しますっ。刺し盛です」
注文したつまみは、これで全部揃った。
瀧澤は、相変わらず口数が少ない。
「瀧澤さんて、結婚してるんですか?」
34なら微妙な年齢だが、彼は首を振った。
「一度も、無いよ。恋人は、何人かいたけど……。そのうち、無口で、つまらないって、言われて……」
「そんなの、相手に見る目が無いんですよ。凄く、優しいのに」
「ありがとう……」
注文しておいたお互いのお替りが運ばれてきて、私はグラスを差し出す。
「乾杯」
「何に?」
瀧澤に笑顔が戻る。
「えーっとぉ。今日、ここに来られたことに」
「うん。乾杯」
グラスを合わせてから、また半分ほど呑んだ。
居酒屋の難点は、チューハイ類の氷が多いこと。溶ける前に呑むから、中身が少なく感じる。それを瀧澤に言うと、氷無しも出来ると聞かされた。
「焼酎も炭酸も、冷えてるから、冷たいし。僕も、そうしようかな……」
「うん。その方がいいー」
タッチパネルのボタンで店員を呼ぶと、彼がその旨を伝えてくれ、ついでにもう1杯ずつ頼んだ。
「2杯にして!」
「かしこまりましたっ。失礼しまーす」
「大丈夫? そんなに呑んで、お店に行かれる?」
瀧澤は、本気で心配している様子。
「大丈夫です。私、強いから」
「それなら、いいけど……」
「失礼しますっ。ハイボールとレモンハイの氷抜き、2杯ずつです」
店員が帰った後、2人で笑ってしまった。私が2杯と言ったから、“2杯ずつ”と勘違いしたのだろう。
「今日は、酔っちゃいそうだよ……」
「酔いましょう! お店なんか、休んでもいいしっ」
私は、本気でそう考えていた。