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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第1章 学生からの旅立ち
「いらっしゃいませー! え?」
蝶ネクタイをした黒服が、女性1人の私に驚く。
「あの、私……」
「ああ、この子は、梨香さん。今日は、体験だから」
さっきの男が出てきて、安心した。やはり、蝶ネクタイをしている。
寮で話した時、源氏名(げんじな)はどうするかと訊かれた。それは、店で使う名前。本名の子も多いと聞き、下の名前のみだからと、私も本名にした。
「よろしくお願いします」
後ろから数人の男性客が入って来ると、黒服がまた声を上げる。そのまま、席へと案内して行った。
「ねぇ、支配人。絆創膏くれる?」
綺麗なドレスを着た女性が、男へ話しかける。
「あら、新人さん? 可愛いわね。よろしく。麗華(れいか)です」
「梨香です。よろしく、お願いします……」
普段は怯む事の無い私でも、やはり緊張してしまう。
絆創膏を受け取った麗華は、私に手を振ってソファーへ行ってしまった。
男は、支配人だったのか。
麗華との会話の中で、支配人は“私”と言っていた。昼間は“俺”だったのに。
店が始まれば、別の人間になる。そう考えると、少しワクワクしてきた。
本当は15歳の私が、店に来れば、18歳の素敵なドレスを着た女性になれる。相手によって、性格を変えるのは得意。それに、麗華のドレスは凄く綺麗だった。
「梨香さん、こっちに来て?」
「はい」
支配人の後に着いて、先の長いソファーへ行く。そこには、綺麗な服装の女性達が10人ほど座っていた。
それぞれに話しをしていたが、私に気付くと話は止まり、一斉に視線を向けられる。
「今日は体験の、梨香さん。よろしくね」
「り、梨香です。よろしくお願いします」
さすがに、圧倒されてしまう。
私はまだ、別の世界の子。だがソファーに加われば、同じ世界に入れる。
よろしくと、それぞれが笑顔で声をかけてくれた。
ここで働くには、綺麗な服が何着も必要だ。今着ているものでは、店では子供っぽいしチープ。
だが、今日は体験だから仕方ない。
支配人に連れられ、私は生まれて初めて、体験者として客の席に着いた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
1週間が過ぎるのは、あっと言う間。
体験した翌日に貯金の大半を降ろし、出来る限りの服を買った。勿論、引っ越しも。