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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第1章  学生からの旅立ち


 引っ越しと言っても、荷物はキャリーケースと大きな鞄だけ。
 先輩は淋しがっていたのは、セックスが出来なくなるからだろう。彼女がいるなら、彼女とやればいいのに。
「おはようございます」
 バイトでもそうだが、今は20時でもこの挨拶が決まり。
 おはようとみんなに返され、奥の更衣室で着替えてから長いソファーの隅へ座る。話しにも混ざれるようになった。
 もう私も、この世界の人間。同じような綺麗なワンピースを着て、薄めの化粧。名前は同じだが、ここでの“梨香”は別人格。
「麗華さん、明菜(あきな)さん、ご指名です。梨香さんも来てください」
 返事をしてから、麗華と明菜の後を着いて行く。
 新人はまず、色々な席に着くらしい。指名料は入らないが、客への顔見せ。
「いらっしゃいませ。失礼します」
「麗華、待ってたよ。明菜ちゃんは、彼の方にね」
 客は3人。
 私は麗華に手招きされ、奥の客の隣へ座った。
「初めまして。梨香です。よろしくお願いします」
 毎回言う台詞。店で作った名刺も3人に渡す。顔と名前を憶えてもらわないと、指名は入らない。
 売り上げの5%が、給料に加算されるし。
「新人か。君は、梨香ちゃんみたいな子が、タイプじゃないのか?」
 恰幅の良い客が、私の隣の優しげな客に言う。
「そうですねえ……」
 照れ笑いをしている。反応は悪くなさそうだ。
「よろしくお願いします」
 ニッコリと笑って言う。
 私はいつも、可愛い系の服装と髪型。若さを生かすのも、この世界では重要。
「梨香ちゃんはいくつ?」
「18です」
「じゃあ、春まで、高校生だったんだ……」
 客が興味を示してくれているよう。
「梨香ちゃん、はい」
「あっ。ありがとうございます。いただきます」
 明菜が、水割りを前に置いてくれた。
 本当は指名ではない私の役目だが、奥に座ったからボトルなどに手が届かない。
 みんなと乾杯して、水割りに口をつける。
 こういった店では、20歳未満でも呑むのが暗黙の了解。客のボトルを減らせば、売り上げにつながる。
「大丈夫? 梨香ちゃんは、ジュースでもいいよ? ねえ、部長」
 恰幅の良い客が部長か。隣の客は若そうだから、役職は無いかもしれない。


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