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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第4章  不思議な感情


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「はい。延長で、お願いします」
 その声に体を起こす。
「あっ……」
 何も言えなくなってしまった。ラブホに慣れているのが、バレただろう。
 彼のシャツは、シワになっている。私は、きちんと服を着ていた。
「目が覚めた? 何か、哀しいことを、思い出したの?」
「ごめんな、さい……」
「大丈夫。僕は、有休を取ったから」
 それなら余計に、やろうと思えば抱けたのに。
「水、取ってくるね」
 有料の冷蔵庫から出した、水を渡してくれる。それを少し飲んでから、瀧澤を見た。
「ごめんなさい」
 私が言うと、彼が動きを止める。
「どうしたの?」
 何故か瀧澤には、正直に話したくなってしまった。
「私……。この前の誕生日で、16に、なりました……」
「えっ……。じゃあ、初めて会った時は、15歳?」
 無言で頷く。
 嫌われるかもしれない。瀧澤は、私が19歳だと信じている。
「本当は、ああいう店では、働けないよね?」
「歳をごまかして、入りました……」
 瀧澤は、動かないまま。
 やはり彼は、店について詳しくないらしい。殆どの子が、18歳未満。それなら、セックス出来ることも知らないのだろう。だから昨夜も、遅く始まる店に行った。
「何か、事情が、あるんだね……」
 優しい声で言われ、涙が自然に零れてくる。
「泣かないで? ねっ?」
「はい……」
 涙を拭うと、瀧澤は笑顔だった。
 それ以降、彼は歳の話をしない。事情も訊いてこない。
「うちの部長、面白いんだよ」
 全く違う話を始め、聞いているうちに笑顔になれた。
 こんなに優しい人に会うのは、初めてだ。
 知らないとは言え、セックス目当てではない。それなのに、同伴に誘ってくれる。
 店に来る客達は、女の子が18歳未満だと気付いている人ばかり。そんな子とセックスをするために店に来て、私達は買われるようなもの。
 店からすれば、商品でしかない。
 昨夜だってそう。
 私からラブホに来たのだから、抱かれてもおかしくない。その方が、私は良かったかもしれない。
 それでも彼は、何もしなかった。
 瀧澤に、客とのセックスのことは知られたくないと思った。それも何故だか、解らない。
 珍しく、彼から話している。場を和ませようとしているのを感じた。


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