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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第5章 店の裏側
「梨香ちゃん? どうぞ?」
空になったグラスに、瀧澤がビールを注いでくれる。
「ありがとうございます」
「あのね……。梨香ちゃんは、僕に、敬語じゃなくて、いいからね。あっ、お店、だからかな?」
瀧澤が、小声で言う。
「う、うんっ。解った」
そう答えると、彼が嬉しそうに笑う。
この笑顔の、傍にいたい。
客とのセックスのことを話して、笑顔を曇らせたくないと思った。
もし過去のことも含め、本当のことを全て話したら、絶対に嫌われる。指名が欲しいわけでも、マンションに住みたいからでもない。
瀧澤を、哀しませたくないから。
笑顔で彼のグラスを取り、何気ないことを話しながら水割りを作る。
ここでは、それが私の仕事。だが話している内容は、今の本心ばかり。
「はい。梨香ちゃんにも」
まだ半分残っているグラスに、ビールを注がれる。
何となく乾杯してから、2人で笑ってしまった。
「あー。またぁ。仲いいんだからぁ」
亜由美の言葉で、4人とも笑い出す。
店だとしても、こんな和やかな雰囲気が続いて欲しいと思った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「えー。またダメなの? 何だよっ!」
「ごめんなさい。もう、予定が……」
別の席から指名があり、そこへ移った直後。今晩のアフターを断ると、客が怒ってしまった。
「別の子にするから。行っていいよ」
「はい。すいません……」
同伴やアフターを断る度、私の客が減っていく。客が減るということは、指名が減り、売り上げも減って行くということ。
だが、2千500円に上がった時給だけで充分。
客が黒服に告げ、私は瀧澤の席に戻る。
「ただいまー」
明るく言ったが、客の声はここまで聞こえていたらしい。
「大丈夫?」
瀧澤に小声で訊かれた。
本当の理由は言えない。アフターを断るのは、セックスを断ること。
「うん。大丈夫。呑もう?」
「また、酔いすぎないでね? ビール、もう無いから、頼む?」
「うん」
酔いすぎないよう言っておきながら、気を遣ってくれる。
「あっ、ちょっと待っててね」
私はフロントへ行き、黒服を呼び留めた。
「今日の、瀧澤さん達の代金、私から引いて?」
「はい。解りました」
彼が金持ちだとは解っている。それでも、私がそうしたかった。