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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第7章  蘇る感情



 だが、瀧澤のことだけは別。
 この5年、夜になるとたまに瀧澤の優しさを思い出していた。
 もう会えなくても構わない。
 けれど私も、これからは瀧澤のような生き方をして行きたいと思う。
 ここを出る時は、21歳終わりの夏。
 最後の1日までご主人様にご奉仕するが、翌日なれば私は自由。
 屋敷での5年は、本当に長かった。
 17歳からの約5年。青春と言ってもいい時間を、気持ちを押し殺して生きる。それはセックス以上に拷問のようだったが、今となれば、私が心を入れ替えるきっかけにもなった気がした。
 ここを出たら、少しのんびりしたい。退職金があるから、安いホテルなら1週間くらいいてもいいだろう。
 だが、無駄遣いはしたくない。金の怖さは、痛いほど身に染みている。
 今日は四菱の令嬢が、自分の執事とともに長男に会いに来る日。
 昨日この屋敷の執事にメイド4人が集められ、注意事項を説明された。
 今日だけ、特別に用意された膝下丈のメイド服。ガーターは見えないから同じだが、ブラも下着も付ける。令嬢のことを、お嬢様と呼ぶ。15歳の奈々は16歳の見習いと、17歳の亜里沙は、18歳だとごまかす。ご主人様への挨拶は、最低限の笑顔。娯楽室の利用は禁止。廊下の清掃担当は、モップで。
 考えてみれば、それが“普通のメイド”だろう。だが私達はこの異様な屋敷に染まり、いつの間にか感情さえ失いそうになっていた。
 セックスでご主人様を喜ばせるだけの、心の無い人形のように。
 後4ヶ月。5年の残りのたった4ヶ月を、酷く長く感じた。


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