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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第7章  蘇る感情


 まず行ったのは、近くの携帯ショップ。
 そこで一番安いスマホを買う。格安ショップのせいか、忘れてきたと言ったら身分証はいらずに済んで助かった。
 その後は、久し振りの電車。
 馴染みの無い場所なのに、窓からの景色を懐かしく感じた。
 ある駅名のアナウンスを聞き、衝動的に下車する。トイレへ行き、個室でこっそりと財布の中のメモを確認した。
 やはりこの駅だ。
 この駅から徒歩10分で、瀧澤の家。
 実際に行ったことは無かったが、店での話の中で、自宅までの地図を書いてくれた。
 ほんの少し、見るだけでもいい。
 これからの私の生き方の、手本となる瀧澤を。
 戸惑いはあったが、絶対に迷惑はかけない。そう決めて、地図を頼りに瀧澤の家へと歩き出した。


 夏だからまだ明るいが、17時過ぎ。
 住宅街の中。広い庭のある立派な一軒家に、瀧澤という表札があった。
 斜め向かいには、小さな公園。私はそこのベンチに座り、玄関先を見つめる。
 灯りは点いていない。まだ誰もいないのだろう。
 今日は気温が高く、陽が傾いてもあまり気温は下がらない。だが暑ささえも忘れ、瀧澤の家の玄関を見つめていた。
 19時を過ぎると、スーツ姿の男女が通るようになってくる。
 その中に見慣れた姿を見つけ、立ち上がってしまった。
「瀧澤さんっ!!」
 見るだけでいいと、思っていたのに。
 叫ばずにはいられなかった。
 来なければ良かったと、私は背中を向け、逃げるように別の出口から公園を出ようと歩き出す。
「梨香ちゃん!?」
 瀧澤が走ってくる音。
 公園の中ほどで、腕を掴まれた。
「梨香ちゃん……」
 変わらない優しげな言葉を聞き、彼の胸にしがみつく。
 自然と涙が溢れてくる。
 見たいだけだったのに。実際に傍にいると、また温もりが欲しくなってしまう。
「梨香ちゃん……。良かったら、家に入る? ここは、暑かっただろう?」
 無言で頷くと、キャリーバッグを引いてくれる。
 私はバッグを抱きしめたまま、瀧澤の後を着いて行った。


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