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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第7章 蘇る感情
広い玄関にキャリーバッグを置き、私をリビングのソファーへ促す。
「中の方が暑いね。すぐ、エアコン入れるから。座ってて……」
頷いてから、ソファーの隅に座った。エアコンからの冷たい風が、気持ち良い。
「どうぞ。ビールの方が、いいかな?」
麦茶を出され、一気に飲んでしまった。
思い返せば、最後に水分を摂ったのは屋敷を出る前だ。
すぐにおかわりを注いでくれ、そのボトルをテーブルに置く。
「すぐ着替えてくるから。ちょっとだけ待ってて」
瀧澤が2階へ上がって行く音。
あれから5年だから、彼は39歳。
家の中には、誰もいないようだ。手紙を信じて、待っていてくれたのだろうか。そんな都合のいい考えが過る。
彼は元々優しい人。私が暑い場所にいたから、家で休ませているのだろう。今のうちに帰ろうと思い、静かに玄関へ向かった。
私は彼に優しくされるほど、価値のある人間ではない。
「梨香ちゃん!」
私服に着替えてきた瀧澤に、また腕を掴まれた。
「どこ、行くの?」
「私……」
「泊まってても、いいんだよ? 空いてる、部屋があるから。用があるなら、構わないけど……」
首を振ってから、促されるままソファーの隅へ戻ったが、何を話せばいいのか解らない。
5年も姿を見せなかったのに、急に訪ねるなんて。
「ごめんなさい。私……」
それ以上、言葉が続かない。
理由を話せば、絶対に嫌われる。2度と会えなくても構わないが、嫌われたくはなかった。
瀧澤の事は、いい思い出にしたい。
「あの……。私……」
「いいんだよ。今は話さなくて……」
そう言われて、泣き出してしまった。
彼が、ゆっくりと隣に座ってくる。その広い胸で、思い切り泣いた。この5年を、涙と一緒に流してしまいたい。
やんわりと背中に回った彼の手が、優しく背中を撫でてくれる。
まるで、5年前に戻ったよう。まだ、店を辞めようと考えていられた頃に。
「私……。私……」
話さなくていいよと言うように、頭を撫でられた。
「ビール呑む前に、風呂に、入る?」
無言で頷く。
その言葉も、私の気を紛らわせるための優しさ。
「じゃあ、風呂の用意してくるね? あっ。着替えはあるの?」
首を振った。