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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第7章 蘇る感情
この5年、アルコールは呑んでいない。
娯楽室にも無かったし、リクエストしても駄目で、そのうちに呑みたいという気持ちも薄れていくもの。
少しして、瀧澤が髪を拭きながら戻って来た。
「呑んでなかったの? じゃあ、一緒に呑もうか」
彼はサイドボードからウイスキーのボトルを出し、キッチンからグラスと氷を持ってくる。
座っているのは向かいだが、まるで店でのよう。
彼が店に来た時だけは、苦しいことを忘れられた。それくらい、瀧澤と一緒にいるのが楽しかったのに。
思い出すとまた涙が零れそうになり、笑顔を作った。今日会ってから初めての笑顔に、彼も安心した表情。
「作ります」
瀧澤が氷を入れたグラスを引き寄せた。
「いいよ。家なんだから」
「作らせてください」
また笑顔で言うと、彼がトングを渡してくれる。
水割りを作っている間に、瀧澤はビールを注いでくれた。
乾杯して呑むと、凄く美味しい。5年も呑めなかったせいで、余計にそう感じるのかもしれない。
「そうだ。つまみを、買ってきたんだった」
彼は急いで2階へ行き、コンビニの袋を持って来た。
「良かった……」
向かいに座った瀧澤が言う。
「え?」
「いや……。また、帰っちゃうかと、思って……」
その言葉に、自然と笑いが漏れた。
私は今、パジャマ姿。いくらなんでも、このままでは外へ出られないのに。
そんなに心配してくれる人を、困らせたくはない。今晩はお世話になるとしても、明日には出て行かなければ。
だから今晩だけは、昔に戻って楽しみたい。
コンビニの袋から出てきたのは、イカやチーズなどのつまみ。そのパッケージを開け、キッチンから持って来た皿に移す。
「今日は、1人で呑む予定だったんですか?」
「ああ。最近、あまり呑みに行かないからね」
それは私がいないせいかと、また良い方に考えてしまう。
「そう言えば……」
私は、瀧澤のグラスを見つめた。
「家でも、ビールは呑まないんですか?」
店での彼は、いつも水割り。私が頼んだビールを勧めても、一口も呑まなかった。
「ビールの苦みが、苦手でね……」
「じゃあ、このビールは……」
来客用なのだろうか。
「ビールは、もし、梨香ちゃんが、来たら、と思って……」