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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第7章 蘇る感情
「5年も、ですか?」
「ああ。古くなった物は、廃棄してるから。それは、先週買ったから、大丈夫だよ」
彼が笑う。
「あの……。ご結婚は? 恋人、とか……」
思い切って訊いてみる。
見た目は平然としているつもりだが、内心は緊張していた。
「どっちも、いないよ。母親は、9年前に、父親は、それを追うようにして、8年前に。それぞれの、病気で亡くなってからから、ずっと、1人だよ……」
何でもない笑顔に、我慢していた涙が零れる。
「え? どうしたの? 梨香ちゃん?」
彼は、本当に待っていてくれていた。手紙だけ残し、勝手にいなくなった私を。
「いいえ。ありがとう、ござい、ます……」
涙を拭いながら、答えた。
こんな優しさに、私はどうやって恩を返せばいいのだろう。
瀧澤が、見返りを求めてないとは解っている。それでも、その優しさに応えたいと思ってしまう。
5年前と変わらない優しさ。
彼を手本に生きて行こうと決めたが、私は、ここまで優しくなれるだろうか。
「じゃあ、呑もう? どうぞ」
半分ほど空いたグラスに、ビールを継ぎ足してくれる。
涙は残っていたが、私は笑顔を見せてから、グラスに口をつけた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「大丈夫? ここだよ。すぐ、布団敷くから、ちょっと待ってて」
瀧澤に支えられて階段を登り、2階の奥の部屋へ入る。
5年振りのアルコールで酔うのが早く、昔のつもりで呑んでいたら、足がフラついてしまった。
「どうぞ」
「すいま、せん……」
敷いてくれた布団に横になると、彼がケットを掛けてくれる。
「僕の寝室は、向かいだから。具合が、悪くなったりしたら、何時でも声かけてね。お休み……」
枕元のスタンドだけを残し、部屋の灯りが消え、瀧澤が出て行く。
眠れないまま少し休むと、大分楽になってきた。体を起こし、手が届く所に置いていってくれた水を飲む。
少しフラつきながら立ち上がり、彼の部屋へと向かった。