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第11章 嫉妬

智広の頭の中は混乱していた。

明るくて常に笑顔を称えていた当時の愛先輩の心中は、決して穏やかなものではなく、とてもすさんでいたのだ。

バイトと部活の掛け持ちをしながら卒なく家事をこなす、という完璧なイメージを部内のみんなが持っていたはずである。

だが、全く違ったのだ。

勝手なイメージに囚われてしまい、肝心なことに目を向けていなかったのかもしれない。

あの笑顔の裏には、決して人にはいえない後ろ向きな感情がうごめいていたのだ。

あの日、と愛先輩がつぶやくと、そのまま押し黙ってしまった。

彼女がいう「あの日」というのは智広の頭の中で浮かぶ日と同じだとは思ったが、口を挟んでしまえば彼女が告白してくれなくなるのではと考えたが、あえて口に出して確認してみた。