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悦楽にて成仏して頂きます
第3章  霊の望み



 朝になってカーテンを開けると、ベランダに立っている男性がいる。
 30代だろう。やはり白装束姿で、私をジっと見ていた。
 見られているままでは落ち着かない。
 朝なのにカーテンを閉め、トーストを食べてから軽いメイク。バッグの中身を確認してから、玄関を出て鍵を掛けた。
 振り返ると、ベランダにいたはずの男性が後ろにいる。
 今日1日、霊付きのままか……。
 今までも、何度かある。忙しい時は、3日間同じ霊を連れていた。大学では講義の時も、友達とランチをしている時も、誰も気付かない。バイト先でも同じ。
 騒がれても困るが、これが子供の頃からの淋しい感じ。誰にも理解してもらえないのを、孤独だと思う時もある。


結局霊付きのままバイトも終え、マンションへ戻った。
「あっ、いけない。どうぞ、お入りください」
 手を合わせて念じ、霊を部屋へ呼び込む。
 セックスでの除霊は、毎日ではない。平均的に、月に2、3度。無い月だってあったのに、最近は増えている気がする。
 昨日響揮は社に戻って試してみると言っていたが、そのまま呑みに行ってしまったのだろう。
 結局こうやって、セックス除霊になる。明日も霊付きでは、霊に悪いが鬱陶しい。
 霊を部屋に入れ、シャワーを浴びる。
 バスタオルだけで部屋へ戻ると、やはり霊は部屋の中央に突っ立ったまま。
 これからは、あまり立ち入った話を訊かない方がいいだろう。また暴走されたら困る。
「私は楓。服、脱いで。来て……」
 ベッドに座って誘う。
 彼は白装束を脱いでベッドに来ると、押し倒してすぐに覆いかぶさってくる。経験はあるようだ。それなのに、なぜセックス目的で彷徨っているのだろう。
「あんっ」
 キスをしようとしたが、バスタオルを外され、いきなり乳首をしゃぶられる。口内で舌を動かされ、ビクンと体が震えた。
「はぁっ、んんっ」
 今までに無いテクニック。
 これまでの除霊は、殆どが童貞。そのせいで、セックスに強い未練を残す。経験者でも何かしらセックスに未練があると、成仏出来ないらしい。霊は割とデリケート。
「あっ、あぁんっ」
 30代に見えるから、結婚していたのかもしれない。
 巧みな舌遣いだけで、自然と背中が反ってしまう。


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