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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

亜美は寒さにカラダを震わせながら、その寒さのせいで先ほどから迫り来る尿意とも戦っていた。
よりによってこんなときに──と思うも、もう我慢の限界は近い。

亜美は意を決して、声を出してみることにする。

「──す、すいません…ご主人様…?あのっ…お手洗いに…行かせてほしいのですが…」

そう口に出してみたものの、果たしてこの声は届いているのだろうか。
いつもなら意地悪な慎二の声が聞こえてくるのに、今亜美の耳には知らない曲がひたすら爆音で流れ続けているだけだ。

すると亜美は背中を押され、少し前へ出る。
次に右の手首を掴まれ、なにかに触れさせられた。

亜美は、今手に触れているものの形状を推測する。

冷たくて、固い。
角がある。


(これは…なに…?)


触れていくうちに、ボタンのような物があることに気づく。


(もっ…もしかして、これは──)


"男子用の小便器" ──かもしれない。
いま一度、ほかの部分にも触れてみる。


(やっぱり、そう。ということは、今私がいるのは──)


男子トイレの中、ということになる。
そう思ってみれば、そんな臭いが漂っている。

そして、亜美は限られた情報の中で悟ったのだった。


(ここで…しろ、ってことなの…?)


すでに尿意は限界に達している。
ここはもう、従うしかないのか。

亜美は再度、声を発した。

「──ここにして…いいんです…よね?」

すると、慎二の両手が亜美の両肩を掴み、下へ下へと押さえ付けてくる。
それは、"ここでかがめ" ──という合図である。

亜美は足を開き、蹲踞(そんきょ)の姿勢を取る。
そこへ慎二が、亜美の両手を頭の後ろで組ませた。

この格好で、男子用の小便器に放尿しろ──ということなのだろう。

しかし──膀胱はもうパンパンにであるのに、慣れない姿勢のせいでうまく排尿することができない。

亜美が戸惑っていると、思い切り尻を叩かれた。

「痛ッ──!」

亜美は思わず声を漏らすが、お構いなしとばかりに容赦ないスパンキングが繰り返される。

そして、その尻を叩く手は──ひとつではなかった。

亜美はこのとき、慎二のほかにもここに誰かがいることを確信する。

少なくとも、1人以上の "信者" とやらに──このあられもない姿を見られているのだ。


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