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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

慎二が部屋から去ったあと、田中は言いつけどおりデジカメを三脚にセットすると、布団の位置が映るようにパソコンデスクの上にそれを設置した。

2人の間に、なんとも言えない空気が流れる。

亜美は、慎二の行動を不可解に思っていた。
慎二は元から、亜美が他の男に犯されているところに興味が無かったはずだ。
だから、基本的には亜美が他の男と行為に及んでいる間は寄り付かないし、部屋中に貼られた動画のスクショコピーも、被写体は慎二と亜美の物だけだ。

いくらソリの合う友人だとして、実際に今日初めて会った素性の分からない男の部屋に、亜美を一人置いて行くその大胆さに、少々戸惑いを覚えていた。
しかも、表向きは誘拐未遂があった直後であるにも関わらず。

田中は自宅に招いている以上、そして車を人質に取られている以上、おかしな事はしないと踏んだのかもしれないが、妙だーー。

亜美が頭の中で考えを巡らせていると、ようやく田中が口を開く。

「亜美…さん。ではっ…先程の続きをっ…よ、よろしいでしょうかっ」

「ーーあ、はいっ。ちょっとその前に、シャワーをお借りして…いいですか?」

「えっ!?…あ、はい!」

「…さすがにこのままじゃ…ですよね?」

亜美のカラダからは、公園のトイレでかけられた慎二と田中の小便が乾き、悪臭を放っていた。
今から部屋でするのに、わざわざこの臭いをさせておく必要はない。

田中は亜美を風呂場に案内すると、給湯器のスイッチを入れた。

冷え切ったカラダがシャワーのお湯で温められていく。

亜美は、小便で汚れたカラダとごわついた髪を洗い流しながら、公園での貴之との会話を思い出していた。

よりによってこんな日に、雅彦が朝帰りである事も、つくづく運が悪い。

何の義理があって、見ず知らずの中年男の筆下ろしをせねばならないのか。

しかし、それが貴之を傷つけた罰であるならば、亜美は甘んじて受けようとも思った。

今更もう、減るものでも無い。

ただただ、貴之の身を案じながら、亜美はシャワーの蛇口を閉めた。

狭い脱衣所へ上がると、そこには折りたたまれたバスタオルが一枚置いてあった。

亜美は深く溜め息をつくと、バスタオルを手に取り、濡れたカラダを吹き上げ、田中の待つ部屋へと戻った。
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