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セイドレイ【完結】
第28章 功罪
「…今頃お家でパパとママが心配してるんじゃないか?あ、亜美ちゃんのパパとママは死んじゃったんだっけ?ははっ、ごめんね辛いこと思い出させちゃって」

酒井はわざとらしい言葉を亜美に浴びせながら、吸い終わったタバコの火を消した。

「…さて…と、そろそろ二回戦と行こかなぁ。ほら、立てよ便器女」

「…は、はい……」


すると酒井は、片腕で亜美を軽々と持ち上げ、まるで荷物を運ぶかのように亜美を肩に担ぐと、バルコニーへ出る窓の前までやってきた。

「…ここさぁ、最上階だから夜景が綺麗なんだって。亜美ちゃんも見たくない?」

「えっ…?」

次の瞬間、酒井が窓を開け、亜美を担いだままバルコニーへ出た。

12月の冷たい風が、全裸の亜美のカラダに突き刺さる。

「寒っ…!へぇ~割といいロケーションじゃん。あ、このままじゃ見えないよね」

そう言って酒井はバルコニーの手すりまで移動し、地面を覗き込む。

「ひぇ~やっぱ高いわここ。こんなとこから飛び降りたら一瞬でお陀仏だわなぁ」

亜美は高所恐怖症の為、目を逸らし、酒井のカラダにしがみつく。

「あれ?どしたの亜美ちゃん?せっかく夜景が綺麗なのに…しょうがないなぁ。もっとよく見せてあげよっか」

「きゃっ!!?」

すると酒井は、バルコニーの手すりに亜美の背を押し付けると、そのまま首を絞め始めた。

「あ゛っ…がっ!やめ…て……くる…し……あ゛あ゛っっ…ぐっ……がっ…」

亜美の細い首を、酒井は片手で絞め上げながら、徐々に亜美を持ち上げていく。

亜美は、自分の首を絞める酒井の太い腕を両手で掴み足をバタつかせて必死に抵抗するが、全く歯が立たない。

持ち上げられた亜美のカラダは、完全に手すりの高さを超えていた。
今酒井が手を離したら、亜美は背中から地上に落ちてしまう。

亜美はその信じられないような恐怖におののきつつも、首を絞められているせいでだんだん意識が朦朧としてくる。

「怖い~?怖いよね?俺が手を離したら下まで真っ逆さまだよ?死んじゃうよ~?」

「…や゛め゛で……ぐっ…う゛ぐっ…」

「でもこれでパパとママのとこ行けるか~どうする~?ははっ!怖いね~死にたくないよね~?」

「………い゛や゛っ…」


その一部始終を、ふすまの向こうから見ていた本山は、さすがにこれはまずいのでは無いかと、止めに行くべきか悩んでいた。
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