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僕と彼のイルミネーション
第2章 色々な出会い
「何で付いて来んだよ。お前は自分の席があんだろー」
「いいじゃーん!」
拓海と真琴の声。
拓海が席を移ると、真琴も付いて行っているらしい。それを見て、手を叩いて笑っている客もいた。
「土曜の名物だから」
涼介が笑っている。
三角関係、という言葉が浮かんだ。
拓海の僕に対する態度は、冷たいまま。
龍と拓海は恋人同士で、真琴は拓海が好き。でも涼介は、真琴が好き。
四角関係だ。
涼介に何と言えばいいのか困っていると、カウンターの客のグラスが空いた。涼介に頭を下げてから水割りを作りに行く。
同性だから、ややこしくなりがちなのかもしれない。
水割りを作った客にも飲み物を勧められ、またジュースを頼んだ。今度は自分で作って、礼と乾杯をする。
ややこしいと言えば、拓海の敵対心のようなものもそう。龍のマンションにいるから、誤解されたまま。
龍から、笑顔で洗い物を受け取った。そんな瞬間も、拓海は見逃していない。龍がカウンターに近付く度、様子を伺っているよう。
仕事は楽しくなってきたが、それだけが悩みの種。龍がきちんと言ってくれればいいのに。
「瑞希クンは、東京?」
「いえ。北海道、です……」
客に訊かれて、正直に答えた。
「いいよねー。北海道。毎年スノボに行くんだけど」
笑顔で頷いたが、僕の実家は観光地とは程遠い田舎町。
「でも、訛ってないんだね」
別の客が訊いてくる。
訛りを話すのは、お年寄りくらい。元々北海道は、本州の人が思うほど訛りが少ない。
カウンターの客は二人連れか一人が多いから、みんな一緒に話している。元々、顔見知りなのだろう。
客自体若者が多く、店全体が仲間のような雰囲気。
「自分の席に戻れってっ」
「いいじゃんっ!」
そんな中、拓海と真琴の声に加え、客達の笑い声が響いていた。