この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕と彼のイルミネーション
第2章 色々な出会い
「ありがとうございましたー」
カウンターの二人連れが帰ると同時に、珍しく中年の客が入ってくる。
「いらっしゃいませー。カウンターへどうぞ」
龍の声がして、急いでカウンターを片付けた。
「いらっしゃいませ」
客は、もう酔っている様子。単品で頼んだ水割りを呑み始めた。
「キミ、可愛いねえ。名前は? いくつ?」
「瑞希です。18です……」
「瑞希くんは、どこが感じるの?」
何も言えないまま、男を見つめてしまう。
セックスについて言っているのは理解出来た。でも、経験が無いなんて言いたくない。
「今晩どう? 気持ち悦くしてあげるから」
突然腕を掴まれて、動けなくなる。
「三万。瑞希クンなら、五万出すよ?」
「いえ……」
男は腕を離してくれない。
「いいねえ。若い子はスベスベで。体も同じなんだろうね」
店内が、少し静まったよう。
「ボトル入れるからさあ。一番高いのにしてよ」
そう言われても、ボトルも取りに行かれない。
龍がカウンターへ来て、封を切ったボトルを客の前へ置いた。
「一番高いボトルです」
それだけ言うと、カウンターから出ていく。
助けて欲しいと思ったが、自分で何とかするしかないのだろう。そう思った時、龍が男の横へ立つ。
「瑞希から、手を放してください」
その声に、本当に店内が静まり返る。みんなの視線が集まり、俯いた。
「何だよ。いいところなのに」
「ウチに、体を売るような従業員はいません」
「煩いな。あっち行けよ」
顔を上げると、龍と男との睨み合い。
「放せって言ってんだろ! このスケベオヤジ!」
龍の声が店内に響く。
「料金はいりませんので、お帰りください」
「解ったよ。二度と来るか、こんな店っ」
「こちらも、出入り禁止とさせて頂きます」
先回りした龍が、ドアを開ける。男が出て行くと、バタンと閉めた。
戻った龍は、開けたばかりのボトルをそのまま呑んでカウンターに置く。
途端、店内が騒めく。
「いいぞっ、龍!」
「さすが店長っ!」
あちこちから声がかかり、拍手も起こった。真琴は、拳を振り上げての笑顔。
「嫌な客に触られたら、何でも言っていいからな。暴力さえ、振るわなきゃ」
頷いてから、まだ怖くてカウンターの隅へ行った。