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僕と彼のイルミネーション
第2章  色々な出会い



「いらっしゃいませー」
 三日が経ち土曜日になると、僕も声を出せるようになる。
 開店して二時間ほどで、店は満席。知り合い同士なら、相席をしてもらっている。
 チャームという、お通しのような物を作れるようにもなった。
 日替わりで、今日のチャームはレーズンバター。龍が切って冷蔵庫に入っているから、シャンパングラスに盛り付けるだけ。それを運ぶのは、龍か拓海。
 僕は相変わらずカウンターの中で、洗い物や水割り作り。でも客と話すのも、少しずつ楽しくなってきた。
 こんなに混んでいるのに、カウンターの隅二席には、予約席のプレート。
「いらっしゃいませー」
 不思議だと思っていると、やって来たのは街で会った真琴と涼介。当たり前のように、予約席へ座った。
「こんばんは。瑞希クン。覚えてる?」
 涼介に言われ、笑顔で頷いた。
「オレは? 忘れてないよねー?」
「はい」
 あの時の二人を思い出して、笑いを堪える。土曜日の常連というのは、忙しさから忘れていた。
 チャームを出すと、龍がボトルを出してくれる。後は僕1人でも大丈夫。
 水割りを作り、二人の前へ置いた。
「カンパーイ」
 真琴の声で、二人がグラスを合わせる。
 一口呑むと、真琴は店内を見回した。
「あっ、拓海っ―!」
 そのままグラスを持って、拓海が付いている席へ行ってしまう。
「悪いけど、もう一杯作って、マコちゃんの場所に置いといてくれる?」
「はい……」
 ボトルのタグには“真琴・涼介”と書いてある。会った時も一緒だったから、恋人同士だと思い込んでいた。
「マコちゃんは、拓海が大好きだから」
 笑ってはいるが、涼介が淋しそうに見える。
「瑞希クンは、呑まないの?」
「お酒は……」
「じゃあ、ジュースにしなよ」
 丁度料理を作りに来た龍が、「ありがとうございまーす」と言ってオレンジジュースを出してくれた。
 そう言えば、メニューにジュースもある。これは、涼介達が払ってくれるのだろう。
 僕もお礼を言ってから、涼介と乾杯した。
 調理した物を持って行く龍が、笑顔でポンと背中を叩いていく。
 エールだろう。
 少しずつだが、僕もこの店に慣れてきた。


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