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僕と彼のイルミネーション
第2章 色々な出会い
「龍らしいな」
涼介も、拍手をしている。
「瑞希。ケチが付いたから、みんなにビール出してやれよ」
「う、うん……」
龍に言われて、冷蔵庫から席の数だけビールを出した。
みんな優しい。そんな優しさで、この店は繁盛しているのだろう。怖い街だとしか思っていなかったが、それだけじゃない。
涙を堪える為に、自分から涼介へ笑顔を見せた。
「大丈夫だよ、この店は。心配いらないから」
そう言われて、涙が零れてしまう。
「ごめんなさい……」
「龍を信じれば、いいんだから」
涙を拭って、頷いた。
広い街で、龍に偶然出会えたのは奇跡。
まだ仕事はおぼつかないが、何だかみんなと繋がれたような気持ちになった。
「呑もう。ジュースでもいいから」
涼介と乾杯すると、カウンターの客が次々とグラスを差し出してくる。テーブル席からわざわざ来てくれる客もいて、全員と乾杯した。
龍はさっき呑んだボトルを差し出し、乾杯してラッパ呑み。拓海は全てのテーブルにビールとグラスを配っていた。
客が帰る度、僕に声をかけてくれる。“頑張って”や“辞めるなよ”など。
やっとカウンターへ戻って来た真琴は、あちこちで呑んで酔っている様子。
「オレだったら、蹴飛ばすけどなあ」
「マコちゃん。この店で、暴力は禁止」
「分かってるよ。言っただけ……」
真琴が、涼介によりかかる。
こうして見ていると、仲が良い恋人同士に思えるのに。
閉店になると、僕とハイタッチをして帰る客もいた。照れはあるが、そう言った触れ合いなら嫌じゃない。
全ての客を送り出すと、龍はすぐソファーへ座った。
ラッパ呑みしていたボトルは空。それだけ呑めば、酔うだろう。
「今日は、もう帰るぞー」
外の看板を持って来た拓海も、頷いている。
フラフラと立ち上がった龍について、三人で店を出た。
拓海がタクシーを止め、先に僕達を載せてくれる。今日の後半、拓海の機嫌が少し良さそうだった。
きっと、段々と拓海との距離も縮まるはず。そう考えながら、タクシーの揺れに身を任せた。