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僕と彼のイルミネーション
第3章  不協和音



 日曜日で店が休みの今日、目覚ましはかけないまま。
 昼過ぎに起きて恐る恐るリビングへ行くと、龍はテレビのワイドショウを観ていた。
「オハヨ……」
「おはよう、ござい、ます……」
 そのままシャワーへ行こうとすると、龍に呼び止められる。
「昨夜は、悪かったな。酔ってて……」
 そんな事、正当な理由にならない。
 酔っていれば、犯罪を犯しても構わないと思っているのだろうか。それとも、気軽に同居する同じ性癖の人間だから、セックス目当てだと考えているのか。
「俺、出かけるから。月曜は、十七時に店に来いよ……」
 そう言うと、龍はテーブルに鍵を二本置いた。その横にあるのは、食パンの袋とラップの掛かったオムレツなどの皿。
 テレビを消すと、ソファーの下にあった大きめの鞄を持った龍が出て行く。
 玄関ドアの閉まる音がして、ソファーへ座った。
 オムレツには、サラダとベーコンが添えてある。
 酔っていたせいだと謝られたのは、僕を好きじゃないから。愛情があって抱きたかったんじゃないという意味。
 溜息をついてから、シャワーを浴びた。
 何故かまた、涙が出てくる。
 昨夜は突然で嫌だったが、僕はいつの間にか、龍を人として好きになっていた。この街で初めて優しくされた優しさしさから。
 でも彼は、僕が思っているような人じゃない。
 また、複雑な思いが込み上げてくる。それでも、もう泣いたりはしなかった。
 吹っ切れてはいないが、諦めの心境。終わった事を悔やんでも、元へは戻れない。
 月曜日に店へと言われたのは、龍は今晩帰って来ないからだろう。どこへ行ったのか解らないが、何となくホッとしてしまった。
 今日一日は、彼と顔を合わせずに済む。
 しっかりと全身を洗い、髪をタオルで拭きながら部屋へ戻る。
 シーツを交換し、昨夜の物は洗濯機へ。乾燥時間をセットしてから、リビングのソファーへ座った。
 パンくらい自分で焼けるが、食欲は無い。
 近くで見ると、皿の下に札が置いてあった。手に取ると、三万円。
 昨夜のセックスの代金だろうか。それなら、店に来た中年の客と変わらない。
 龍にも物として見られていたようで、気分が悪かった。


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