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僕と彼のイルミネーション
第3章 不協和音
スマホからの音に目を覚ます。見ると、月曜日の昼。
こんなに寝ていたなんて、自分でも驚いてしまった。
熱っぽさも大分抜けたようだから、着替えを持ってシャワーへ向かう。
途中で通ったリビングのテーブルは、日曜日のまま。
僕の思いのように、時が止まったよう。
でもここで、逃げたくないと思った。僕にだって意地がある。
今度龍が部屋に入ってきたら、蹴飛ばしてでも抵抗すればいい。それで追い出されたら、出て行けばいいだけ。
シャワーを浴びてゆっくりと支度してから、マンションを出た。
仕事は仕事と、割り切ればいい。プライベートを引きずるのは、マンションでだけにする。そう決めた。
僕だって18歳の男だ。決められた事はきちんと熟さないと。
店まで歩いて行き、思い切ってドアを開けようとした。
開かない。少し早かったのだろうか。
仕方なく、“店”というタグの付いた鍵で開ける。
中には誰もいない。
エプロンを着け土曜に残した洗い物をしていると、龍と拓海が入って来た。
「おはようございます」
自分から言う。
「オハヨ」
「早いな」
一緒に来たのは、拓海の所へ泊ったからだろう。
龍はいつも通り。僕との事なんて無かったように、隣で仕込みを始める。拓海は掃除をしていた。
まだ看板も出していない、開店十五分前。
ドアが開いて入って来たのは、真琴。
「マコちゃん。まだだぞ?」
龍に言われても気にせず、カウンターの隅へ座った。
「一人?」
拓海に訊かれても、真琴は何も話さない。
掃除用具を片付けた拓海が、手を洗ってから真琴の隣へ座る。
「呑みたいだけ」
「ホラ」
言いながら龍がボトルとグラスを出したから、僕はアイスとミネを出す。
真琴は溜息をついている。
街で会った時も店でも、あんなに元気だったのに。
それに龍は、“土曜の常連”と言っていた。今日は月曜。涼介もいない。
「呑みたいだけだってば」
「明日、大学だろ?」
言いながら、拓海が薄めの水割りを作る。
真琴はそれを一気に飲み干すと、拓海の前に置く。
「もっと濃くしてよ」
「ゆっくり呑めよ」
拓海は自分の分も作り、乾杯してから呑み始めた。
僕は急いで、龍が作ったチャームを出す。
何だか、みんなの様子がおかしい。